第14話

「おう!帰ったか!」


ギルドに入るなり、ギルドマスターが声をかけてくる。


「はい、帰りました」


ギルドの中にはゼルスとキーサもいた。


「悪いな。加勢に行けなくて」

「ごめんなさいね。今、ダンジョンから帰ったところなのよ」


ゼルスとキーサはそう言って、加勢に行けなかった事を謝ってくる。


「気にしないでくれ。俺も強いドラゴンと闘えて満足したから」


俺が本心からそう言うと、2人は笑った。


「無事のようだな。それで…どうなったんだ?討伐したのか、退却させたのか」


ギルドマスターが真剣な表情で聞いてくる。


「2匹とも討伐しました」

「ウオーッ!」


俺の言葉に歓声があがる。え?2匹のドラゴンごときで、ここまで盛り上がるのか?


「ダンジョンで幾匹ものドラゴンを倒してきたお前からすれば、この盛り上がりは不思議に思うかもしれない。しかしドラゴンとは普通の感性でいえば強敵だ。討伐した上で五体満足など、ありえないんだ」

「そうなのか。まあ、確かに魔龍は強かったな」

「ま、魔龍?タロウ、魔龍と言ったか?!」

「ああ。あ、そうだ。ギルドマスターに報告しておかないといけない事があったんだ。その魔龍だけど、どうやら魔族がけしかけたみたいだ」

「確かに魔龍は魔族が使役しているが…確証はあるのか?」

「本人が言ってたからな。名前は聞いてないけど、魔族の男が言ってた」

「魔族がいたのか!?」


俺の言葉に皆が驚く。まあ、国の外の草原とはいえ人族の土地だ。そこに魔族がいたのだから驚くだろう。


「それで、その魔族は?」

「倒したかったけど、気配を完全に消す技を使われて、逃げられた」

「そうか…まあ、お前が無事なら良いか。それで、その魔族がけしかけた理由は何だったんだ?」

「人族の戦力を測る為と言ってたな。魔龍を倒せるゼルスとキーサがいなければ、魔族側が有利になると判断するらしい。とは言っても戦争は考えていないみたいで、あくまでも、こちらの戦力の確認だったみたいだな」

「難しい問題だな。その魔族の言葉の真偽が分からない」

「ああ。だから、あとはよろしく。俺はそういう難しい話は苦手だ。ルミンさんを待たせるのも悪いしね」


言ってルミンさんを見る。ルミンさんはずっと心配そうな表情をしていたけど、魔族に遇ったと聞いたところから、とても不安そうな表情になったからな。安心させてあげないと。

というわけで、あとの難しい話はギルドマスターに丸投げして、ルミンさんのもとに向かう。


「ただいま、戻りました」

「お帰りなさい。無事で良かったです!」

「え?いや、泣かないでくださいよ。俺、前にも魔族を倒したじゃないですか。たぶん、負けないですよ」

「そうかもしれないですけど、心配だったんです!」

「ありがとうございます、心配してくれて」


そんな言葉しか出なかった。ルミンさんは本当に俺を心配してくれている。それがとても嬉しい。


「あ、そうそう、これが魔龍の命石です」


マジックバッグから命石を2つ取り出してカウンターの上に置く。


「これが魔龍の…すみません。これは換金できないんです」

「そうなんですか?」

「そうだ。この命石から魔龍の特徴やら何やらを研究者が見るんだ。どうやら命石からそういう事が分かるみたいでな」


側に来たギルドマスターが説明してくれる。


「そうなのか」

「でも魔龍討伐の達成報酬は出すから、がっかりするな!」


そう言ってギルドマスターは笑いながら立ち去った。

カウンターに置いた命石はルミンさんが奥に持って行く。


「さて、今日はこれからどうしようかな」

「休まないんですか?」

「そうですね…休むのもありですけど、俺って魔法が使えますか?」

「急にどうしたんですか?魔法なら才能も左右しますけど、基本的に誰でも使えますよ」

「本当ですか?!実はさっき話した魔族が隠密系の技を使ったんです。探知系の魔法なら見つけられると聞いたので、その話の真偽はともかく、探知系の魔法を覚えたいなと思ったんです」

「そうなんですか。それなら、良い師匠に聞いてみるのが良いと思います」

「そうですね。それじゃあ、キーサ、お願いできるかな?」


俺は近くにいたキーサに声をかける。


「さっきの恩も返してない内にお願いするのも悪いけど」

「気にしなくて良いわ。それよりも、探知系の魔法だけで良いの?攻撃系だったり防御系だったり魔法には色々な種類があるわよ。基本くらいなら教えてあげるけど」

「良いのか?!」

「ええ」

「おいおい、今でも強いのに魔法なんて使うようになったら試合相手の俺が不利になるじゃないか!」


ゼルスが言う。


「そうね。でも相手が強い方が楽しいんでしょ?」

「ま、まあな」

「それじゃあ、私の協力は、2人にメリットがあるという事よ」

「でも、どうしてそこまで協力してくれるんだ?」

「そうね…暇つぶし、かしら」

「暇つぶし?」

「この世界での目標はレベルの限界を知る事だけだもの。ダンジョン攻略にも興味はないし、魔法は…もう全ての魔法が使えるからね。魔法の勉強の必要もないの」


キーサの言葉に絶句してしまう。全ての魔法が使えるなんて…魔法使いとして最強の座にいるんじゃないか?


「最強の魔法使いだな!」


ゼルスはそう言って笑う。


「そうかもしれないわね。それじゃあ、私から魔法を教わる事で良い?」

「はい。お願いします!」


こうして俺は魔法の勉強をする事になった。と言っても基礎だけだから、そこまで時間はかからない、と思う。


ちなみにレベルは162から201に上がっていた。ダンジョンのドラゴンもいい経験値稼ぎになると思うけど、魔龍を倒した経験値も多い。

ダンジョンを出た時は185になっていたけど、2匹の魔龍を倒して16も上がっている。強いドラゴンとも闘えたし、レベルも上がったし満足だ!

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