第11話

「さて、ダンジョンに行くか」


朝、俺はダンジョンに行く事にした。聞いた話だと、俺がランクを上げているなか、ゼルスとキーサはダンジョンに入り、200階層まで進んでいるらしい。羨ましい。

まあ羨ましがってるだけでは駄目なので、とにかく進む事にする。


「さて、次が150階層だな」


150階層に通じる階段の前に来て立ち止まる。ここまで遭遇したモンスターは『恐怖の波動』+『幻痛』のコンボ、名付けて瞬殺コンボで倒してきた。後の事も考えて、ドラゴンの命石だけ拾っている。素材や、他のモンスターの命石や素材は拾っていない。

さて、キリのいい階層だし、ボスモンスターが出現しそうだな。楽しみだ!


「またドラゴンか…」


期待して下りたけど、目の前に出現したのはドラゴンだった。100階層のボスの時と同じで広い空間だからボスだというのは間違いないだろう。大きさも、今までのドラゴンと違い8メートルほどある。でも気配を感じてみても俺より強くはない。

という事で瞬殺コンボで終わらせた。

次からの階層に期待だ。


「よう!今の技は見た事がないな!」

「ゼルスか」


命石を拾っている時に後ろから声が聞こえたから見ると、そこにはゼルスが立っていた。


「今の技は武術を極めている時にできるようになったんだ。詳しく説明しようか?」

「いや、いい。人の技の詳細を何の対価も無しに聞くのは失礼にあたるからな」


そういうルールもあるのか。俺も気をつけよう。


「じゃあ、俺は先に行くぞ。お前も死なない程度に頑張れよ。そうじゃないと強くなったお前と闘えないからな!」


そう言ってゼルスは151階層に下りて行く。先に行かれてしまったな。今、151階層に行ってもモンスターと遭遇する機会は少ないだろう。少し待つか。

という事で1時間ほどしてから下りる事にした。それからもドラゴンのみが出現する。飽きてくるけど、経験値稼ぎには良い相手だ。

そして俺はついに、200階層に辿り着いた。


「さあ、どんなモンスターが現れるんだ?」


俺は期待してモンスターの出現を待つ。すると目の前に8メートルほどの高さの黄色いドラゴンが出現した。


「黄色か。色に意味があるのか?」


疑問に思っていると、ドラゴンが口を開ける。口の中では黄色い球ができあがっていく。次の瞬間、黄色の球が俺に向かって放たれた。幸い、黄色の球の速さは今までの炎の球と同じだから、避けることは簡単だった。黄色の球は避けた俺の横を通り過ぎ、壁に当たる。直後、黄色い球が爆発した。壁が焦げている。


「…電撃か」


黄色いドラゴンは電撃を放つらしい。あれは当たったら危ないな。当たらないように速攻で倒さないと!

という事で瞬殺コンボで終わらせた。まだ瞬殺コンボが通じる相手で良かった。


「一瞬で倒せるのね」

「キーサもダンジョンに来たのか」


命石を袋に入れて次の階層に下りようとした時、後ろから声がしたので見ると、そこにはキーサが立っていた。

まるで、さっきのゼルスの時みたいだな。内心で苦笑いしてしまう。


「キーサも?他に誰が…あぁ、ゼルスも来てるのね」

「ああ。ちょうど良い。キーサに聞きたい事ができたんだ」

「何?」

「レベルが上がると攻撃力とか耐久力のステータスが上がるよな。それなら魔法に対する耐久力も上がるのか?」

「勿論よ。そうでないと魔法使いはレベルを上げる必要が無いじゃない」

「確かに、そうだな。それじゃあ俺も魔法に対しての耐久力が上がってるのかな?」

「ええ、上がってるわね」

「分かるのか!?」


ステータスが見えないのに俺の魔法への耐久力が上がっていると断言するキーサに驚いた。


「分かるわよ。相手の魔法への耐久力が分からないと、魔法使いとして対処ができないじゃない」

「それもそうだな」


その事に頭がいかなかった自分が恥ずかしい。考えれば分かる事だったな。


「それが聞きたい事?」

「ああ。それで頼みたい事があるんだけど、俺に電撃を当ててくれないか?」

「…タロウには、そういう性癖があるのね。でも安心して。軽蔑はしないから」

「いや、誤解しないでくれ!俺にそういう趣味はない」


Mじゃないからな。どちらかといえばS…いや、どうでもいいか。


「俺は太陽の熱や自然エネルギーからエネルギーを吸収して自分のエネルギーに変換する事ができる」

「そんな事ができるのね」

「ああ。でも電気は難しいんだ。吸収に失敗したら死ぬ可能性があるからな。そこで、だ。キーサには俺に弱い電撃を放ってほしい。魔法への耐性があるなら電撃に耐えて、吸収ができるはずなんだ」

「良いわよ」

「協力してくれるのか?」

「ええ。実験って楽しいじゃない?人体実験になるけど…本人の同意があるんだから良いわよね」

「あ、ああ」


なんだろう。少し怖かった。恐怖を感じるなんて久し振りだな。


「それじゃあ、いくわよ」


キーサが杖を俺に向けた直後、杖先に電気の球が現れ、それは俺に向かって飛んできた。避けれる速さだけど、吸収するんだから避けてはいけない。電気の球は俺に直撃した。


数秒後。

俺は無傷で立っていた。成功だ!


「ありがとう!電気の吸収に成功したよ!でも、今のは少し痛かったな。どの程度の強さだったんだ?」

「さっきのドラゴンの電撃の半分ほどの威力ね。その威力に耐えられたんだから、魔法耐性が上がってるのよ」

「そうみたいだな。でも痛みはあった。吸収しきれなかった電撃によるダメージが原因だから…100%吸収しきれていない。悪いけど、もう少し付き合ってくれるか?」

「いいわよ」


それからも俺はキーサの電撃を浴び続けた。徐々に電撃の威力を上げてるみたいだけど、俺は全て吸収していく。


「やった!今のは100%吸収できた!キーサ、ありがとう!」

「どういたしまして。今の電撃に耐えられるなら、さっきのドラゴンの電撃を受けても大丈夫ね」

「最後の電撃の威力は、どの程度なんだ?」

「さっきのドラゴンの電撃の10倍の威力よ。もし吸収できなかったら塵になってたわね」

「ど、どうしてそんな威力を?」

「その為に徐々に威力を上げていったんだし、なにより…実験って楽しいじゃない?」

「は、はい」


キーサの言葉は何か怖いものがあるけど、でもお陰でまた強くなる事ができた。


「キーサ、本当にありがとう。この例は必ず返すよ」

「いいのよ、気にしなくて。それじゃあ、私は先に行くわね」


そう言ってキーサは201階層に通じる階段を下りていく。


「…また先に行かれてしまった。まあ、少し疲れたし、休憩していくか」


数十分後、201階層に進む事にした。その後も敵は赤いドラゴンと黄色いドラゴンしか現れず、全て瞬殺コンボで倒していく。


そうしてゼルスとキーサの2人とすれ違う事なく、250階層に到着した。


「もう袋も一杯か。ゼルスとキーサはマジックバッグを持ってるから、余裕で進めるんだろうなぁ。羨ましい」


帰ったら俺の財産でマジックバッグを買えるかどうか、ルミンさんに聞いてみるか。

そうして俺はダンジョンから出る事にした。

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