第10話
「ただいま戻りました」
ギルドに来てルミンさんに報告する。
「お帰りなさい。今回も遅かったですね。もう3日目ですよ」
「3日ですか。ダンジョンに入ると、時間の感覚が分からなくて、つい長く入ってしまいますね」
俺は苦笑いする。時計があれば良いんだけど、この世界にはないからなぁ。今のところ、作ろうとも思わないし。
「今回はどこまで行ったんですか?」
「120階層です」
そう言ってギルドカードをオープンして、ルミンさんに見せる。
「120階層だなんて…本当に凄いです。え?!レベルが132!?」
ルミンさんの言葉に冒険者たちが驚く。他の受付の人も驚いていた。
「すごいレベルじゃないですか!どうやったら、こんなに経験値が貰えたんですか?」
「オーガやドラゴンを倒していたら、こうなりました。100階層以上のモンスターを倒すと、普通より多くの経験値を貰えるんじゃないですか?」
「ドラゴンがいたんですか!?」
俺は100階層で遭遇した大きめのドラゴンと、101階層以上で遭遇した小さめのドラゴンの事を話した。
「この地下にドラゴンがいるなんて…」
「やっぱりドラゴンは普通と違って、特別なモンスターなんですか?」
「勿論です。ドラゴンは1匹で街を壊滅できるほどの力を持っています。そんな驚異的なモンスターがダンジョンにいるなんて…」
「でも俺が倒したドラゴンは、街を壊滅させられるほどの強さはないと思いますよ?野生じゃなくてダンジョンで生まれたドラゴンですし、冒険者が倒せるような強さになってると思います」
いくらドラゴンでも冒険者が攻略する前提のダンジョンで生まれたのであれば、そこまで強くはないと俺は考えた。
「確かにそうかもしれませんが」
それでもルミンさんは地下にいるドラゴンに恐怖を抱いている。
「もしドラゴンが襲ってきても俺が倒しますよ。もうダンジョンで結構な数を倒してきてますからね」
そう言ってルミンさんにギルドカードの一文を見せる。そこには俺が倒したドラゴンの数が記されていた。
俺が倒したドラゴンの数は100匹を超えている。
「こ、こんなに!」
「だから安心してください」
俺が自信たっぷりに言うと、ルミンさんも安心したようだ。
「そうですね。頼りにしてますね、タロウさん♪」
俺を頼りにしてくれるルミンさんの笑顔を見て、やっぱり可愛いな、なんて事を思ってしまった。
「おいおい、昼間からいちゃついてるのか?」
俺に近づいてきた男が笑いながら言う。
「ゼルス、久しぶりだな」
声をかけてきたのはゼルスだった。傍には1人の女性がいる。持っているものは短い杖だから魔法使いかな。
「いちゃついてるわけじゃないんだけどな」
「そうか?仲よさそうだから、そんな関係なのかと思ったぜ」
「別に良いじゃないの。ギルド職員と冒険者の恋愛は自由なんだから」
魔法使いと思われる女性が俺を擁護する。擁護っていっても、俺はルミンさんと交際しているわけじゃないけどな。
「初めまして。俺はタロウ。ランクBの冒険者だ。よろしく」
とりあえず自己紹介をする事にした。
「初めまして。私はキーサ。見ての通り、魔法使いよ。よろしくね。あなたがゼルスの言っていた拳士ね」
名前はキーサか。やっぱり魔法使いだったんだな。年齢は20代後半くらいか。
「俺の事をゼルスが言ってたのか?」
「ええ。レベルは低いけど、強い冒険者がいるってね。でも今は強いみたいね」
レベルが書かれた俺の手の甲をチラッと見てキーサは言った。
「どれどれ?何!レベル132!?」
ゼルスも俺の手の甲を見て驚く。
「どうやって、そんなにレベルを上げたんだ?」
「ダンジョンだよ。今は120階層まで進んだ」
そう言って俺はギルドカードを見せる。
「120階層まで進んでるのか。それにしても132っていうのは凄いな。そんなに強いモンスターがいるのか?」
「ドラゴンが多いな。あとはオーガとか」
「ドラゴン!それは良い事を聞いた。俺は今からダンジョンに行ってくる!最近、レベルが上がらなくて困ってたんだ!」
そう言うと、ゼルスはギルドを出ていった。
「ゼルスが本気になったのなら、ダンジョン攻略階層が上がるわね」
「そうだな。それにしてもキーサもレベルが高いんだな」
俺はキーサの手の甲を見て言う。キーサのレベルは230だ。
「キーサさんもゼルスさんと同じで、レベルの限界を知りたい人ですから」
「レベルの限界?」
「はい。知っての通り、この世界にはレベルという概念が存在します。しかしレベルの限界が分かっていないんです。それは限界になる前に寿命を迎えるからです。だから私達もレベルの限界を気にした事はありませんでした。でも、ゼルスさんとキーサさんがレベルの限界を知りたいと挑戦し始めたんです」
「そうだったんですか。それじゃあ俺もレベルの限界に挑戦しようかな」
ルミンさんの説明を聞いたら、俺もレベルの限界を知りたくなってきた。
「タロウさんも強いから、挑戦するのもアリかもしれないですね」
「ふふ、それじゃあタロウに負けないようにしないとね。私もダンジョンに行ってくるわ」
そう言ってキーサもダンジョンに出かけて行った。
その後、俺はドラゴンの素材と命石、それにオーガの命石を換金して宿に向かった。
本当はダンジョンに行きたかったけど、ルミンさんに怒られそうだからな。
それにしても、キーサも気配を感じてみたら、やっぱり強いな。キーサとも闘えないかな。前の世界で剣士とは闘った事があるけど、魔法使いと闘ったことはないからな。まあ、魔法使い自体がいなかったかど。こんな機会は滅多にない。ゼルスとも闘うし、キーサとも闘うぞ!
そう決意して、俺は寝る事にした。
翌朝。俺はダンジョンに行かず、ギルドに行った。目的はランクを上げることだ。最終目標はSランクだけど、依頼ばかりだと飽きてくるから、Aランクに上がれたら、ダンジョンに行こうと思う。
そして十数日後、俺はAランクになった。
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