第8話 安宿
俺は、かっての最愛の恋人、ルーナとの思い出である、『
その金で、着替えや雑貨等を買った俺は、次に、此の国の美容院に当たる、『
店に入った途端に、店員が嫌な顔して、お取引下さいってな顔して此方に来たので、
一万
仕方無いので、もう一枚出したら、がたいのデカく、カイゼル髭で短髪の店長が飛んできて、俺を店の奥の個室に案内してくれた。
うん、金の力は偉大だ。
結局、スタッフが嫌がったようで、俺の散髪は店長が直々に散髪をしてくれた、
店長も驚いたのだが、何十年も手を入れていないと思われる、俺の髪や髭はガチガチに固まっていて、ハサミすら通らず、
どうしたら、こうなるんだと店長が嘆きながら俺に聞くのだが、まさか、二千年間放置していたから、とは言えないので、
笑って誤魔化した。
まず、店長と、アシスタントの二人がかりで、俺の頭と髭を洗う事五回、普通のシャンプーでは泡すらたたないので、なんか、業務用の強力な洗剤と金ブラシで洗い始め、
洗った後の水も、最初はドブのような色だったが、三回めで灰色になり、五回目のリンスらしき薬の仕上げ頃には、
最後に
その髪質の良さと美しさに店長は感嘆して、俺に
俺は全て断り、
普通に短く、ショートに
成る程、魔導師って職業は都合が良いかもしれない、ただ、俺、此の世界の住人じゃ無いから、魔導の事は何も知らない、
だから、本当の魔導士さんと出会ったら、直ぐに偽者ってバレルから、魔導師を名乗るのも、危険では有る。
髭も剃って貰った俺の前にある鏡は、二千年前の俺の姿を写す筈であった。
しかし、現実は違った、鏡に写っている顔は、
ハッキリ言って、太ってる!
ストレス太りだ!!
連日の残業と仕事のストレスで良く、飲んだり、食ったりしてたからなぁ、
頬っぺたは膨らんでるし、顎は二重だし、腹は出てるし、
昔の面影は全然無い!
筋肉も、全て
まだ、俺、二十代なんだよ、
情けねぇ。
だいたい、何で此の体型だけ、前の世界から持ってくるんだよ!
要らねぇだろ!
本当に、
まぁ、兎に角、
体を鍛えないと。
「で、俺達は一体何をするんだ、大将、人捜しは俺達の仕事じゃねえぞ。」
とリナがルーナに尋ねると、ルーナは頷きながら、
「そうだ我々は人捜しはしない、人捜しはバルセリア支局の捜査課がする、団長と私で決めた事だが、我々は表向きは一ヶ月の休暇となる、」
全員が驚いて、
「休暇が表向きって?」
ルーナは続ける、
「理由は二つ有る、まず一つは、国民に此の事件の真相を知らせない為、国民には広報課が、『プリンシブァ』の魔導機関が故障したことにする、その責任を取って、艦長と機関長は交代する!」
バーン!
リナがテーブルを叩いて立ち上がり、
「そんな
ルーナは落ち着いて、
「確かに、此はルーフェンス飛翔騎士団長の考えでも有る、責任も表向きで二人は、一切の処罰は無い、二人を移動させる為の口実だ、」
リナが
「移動させる口実って?」
ルーナは当然と言う表情で、
「一ヶ月から一年は動かない船に、ベテランの艦長や機関長は置いておける程、魔導省には人材が余っていない。」
全員が驚いて、
「一ヶ月から一年って?」
ルーナは説明を続ける、
「確かに、魔導機関を交換するだけなら、一週間で船は動かせる、だが、理由の二つ目だ、『魔人』は、本当に
全員が愕然とし、リナが驚いて、
「まさか、大将、
ルーナは、何、言ってんだって顔で、
「いないと考えるほうが、非現実的だ、仮に、
滅ぶ、その言葉に、
全員が沈黙する。
「其が、不確定だから、国民には真実を話せない、我々は此の『プリンシブァ』を対魔人対策拠点とし、魔人攻略法を立案し、実行する!」
バーン!
リナは、ニヤリと笑い、両手を打ち鳴らす、
「魔人攻略、そりゃ
ルーナも頷いて、
「そうだ、魔導省も、既に此の牧場から湖までの土地を買収した、更に此方には上級魔導士の派遣も決定した、準備は進んでいる、とは言え、」
リナが不思議そうに、
「何か、問題が有るのか、大将?」
ルーナはため息を付きながら、
「広報課からのクレームで、不眠不休の連戦に此の事故で国民から魔導省に対して私達を心配する声が上がっているそうだ、で、表向きの休暇を取る、広報課は此のバルセリアの自然を背景に私達が休暇を取っている絵を国民に流したいそうだ。」
リナは笑いながら、
「私達って、国民が心配しているのは、大人気の大将だけだよ、御苦労様です。」
ルーナは呆れながら、
「何、言ってんだ、広報課は、女の子に大人気のリナ副将の絵も取るって言ってたぞ。」
「ええええええええええ!!!」
ルーナは、絶叫しているリナを無視して、ウサギを見ながら、
「そう言う分けで、ウサギ、私に力を貸してくれ。」
映像のウサギは、困ったように、
『私は・・・』
ルーナは、もう一度、繰り返す、
「ウサギ、此方に来てくれ、君の力が必要なんだ。」
映像のウサギは、決意する!
真っ直ぐにルーナを見詰めながら、
『・・・分かりました!』
そうだ、
ルーナ様が何時も
その言葉が、
その言葉が私に力を与えてくれる、
今迄、誰も私の事を変人と見て、私の本当の姿を理解してくれなかった、でもルーナ様は違った、
何時も、言ってくれている、助けてくれと、その素晴らしい力を貸してくれと、
私は、ルーナ様から勇気を貰った。
だから、私は出来る。
だから、ハッキリと言える。
分かりました、と、
「まぁ、受付が可愛い娘じゃ無く、初老の、渋いじいさんである事も許す、しかし、もうちっといろいろと説明してくんないかなぁ、金入れ無いとお湯が出ないとか、」
俺は、壁に付いているコイン投入口に金を入れ無いとお湯が出ないシャワーの前で、裸で立ち尽くしていた。
散髪が終わった俺は、店長に安宿を紹介して貰った。
此の街では、仕事で立ち寄るビジネスマンも多いので、素泊まりの安宿が有るそうだ、安宿は、
俺は、その
教えて貰った
じいさんが、二千と言ってきた、
散髪に二万使った俺は、二千は確かに安く感じたので、直ぐに其処に泊まる事にした。
一万を払って、お釣りの八千と円柱型の三階の五番目の部屋の鍵を貰った。
俺は、じいさんに、此れどう使うのと聞いたら、じいさんは驚いて、壁の穴に差し込めと言った。
俺は階段を上がって、三階の突き当たりの部屋の前に立ち、確かに壁に穴が空いているので、鍵を差し込んでみたら、
スウーッ、
と引き戸が引かれた。
此の仕組みも魔導機関ってやつなのか?此の世界は、変な処で便利だ。
入り口の横にシャワーとトイレが有り、その対面が収納で、奥の部屋は細長く四畳位で狭い、ベットとテーブルが有り、正面の壁に小窓が付いている。
まんま、ビジネスホテルだ。
まぁ、観光って分けじゃ無いし、無駄遣いは出来ないから、仕方無い。
俺は諦めてシャワーを浴びる事にした、そして裸になってシャワー室に入ったら、ボタン式の水栓金具があったので押してみたが、お湯が出ない、何度押してもお湯が出ない。
其処で、始めてコインの投入口が有る事に気付いた俺は、最初の愚痴を溢す事になる。
仕方無いので、俺はもう一度、こ汚い服を着て、受付のじいさんの処で、五千
コインの投入口は3つ有り、その上に色が付いたシールが貼ってあった。
真ん中の赤のテープがお湯なのは、分かる、だが、左側の黄色と右側の白は何を意味するんだ?
試しに黄色の投入口にコインを入れてみた処、シャワー口から
石鹸?
じゃ、左のは、
俺は、左側の白い投入口にコインを入れてみると、シャワー口から温風が吹き出てきて、
此の
兎に角、二千年間の
最初は、やはり泡すらたたないのだが、お湯、石鹸、お湯、石鹸を繰り返し、根気よくゴシゴシするうちに、泥沼の流し水も、徐々にキレイになった。
結局、完全にキレイにする為に、俺は四十枚近いコインを使い、ボロボロの着ていた服を棄てようとゴミ箱を見ると、此れにもコイン投入口があって蓋が開く仕様だった。
多分、コインを入れると魔導機関が動いてゴミを処分する仕組みのようだ。
成る程、此の世界は生活、産業、全てが
ハルチカやエミリアが言った事は正しかった、
其を、利用する魔導工学が、俺の前いた世界の電気工学のように、世界を豊かにする為に、発展していった事が分かった。
そして、世界が『
二千年前、俺が『
その時点で世界は、星の僅な恵に感謝して生きていた世界から、『
世界は、もう、此の世界しか無いのか?
其とも、また俺が死ねば、別の世界で生まれ変わる事になるのか、
分からない。
ただ、一つだけ、分かる事は、
俺は此の世界で
だから、まず、服を着て、飯を食いに行こう。
腹へった。
「街に行くのか、大将?」
ルーナは頷いて、
「あぁ、魔導省バルセリア支局の支局長と会って来る、鐘突搭を壊した後処理や、牧場や土地の購入等、結構、無理言ったし、その他の事を打ち合わせして来る。」
リナは、またニヤリと笑い、
「じゃ、俺も、大将の護衛で街に行く!」
ルーナは、慌てて、
「しかし、此の船はどうする?」
とリナに残れと言おうとした時、アマダ・ルーゲンス艦長が、
「ルナリィア殿下、此の船は魔導機関が壊されてしまったから水すら作れない、だから、五十名の隊員が此処で生活して行くのは無理だ、一旦、隊員達や怪我人は街に非難したほうが良い。」
とルーナに提案し、機関長のドルゴ・サーモスも、
「其に、どうせ、此の船は中古のボロ船だ、『魔人』が壊しても惜しくは無い、此処に残るのは、明日の輸送魔導艦が持って来る、荷物を受け取る為に、俺と機関士数名で充分だ。」
ルーナは心配して、
「其では、護衛に、」
「要らねえなぁ、『魔人』の目的が人殺しなら、何時でも出来た、奴等に取って許せねぇのは、理由は知らんが『魔導機関』らしい、となると、危険なのは、街に有る魔導炉だ、あれが狙われたらヤバイ」
とドルコは技術者らしい意見をルーナに言い、ルーナも暫く考えて、
「そうだな、軍事的に魔導炉の位置は秘密にされているが、
ルーナは決意する、
「分かった、此処に拠点が出来る一週間の間、我々は街に滞在して、支局と連携して魔導炉の警備だ、一週間後には防魔省の陸戦隊が来る、そしたら、我々は此処に戻れば良い、決まりだ!」
オリフィア・カーネルセン軍医が呆れて、
「良いですか!ルナリィア殿下!連戦で隊の士気も下がってます!健康面でも不安が有ります!ちゃんと、本当の休暇も取ってくだい!」
ルーナは、あっ、てな顔して、
忘れていた事を思い出したルーナは、ため息を付きながら、
「そうだなぁ、もともと、北方紛争が終わった時、皆に一週間の休暇を約束していたのを、無理して此処まで来たんだ、分かった、街で全員、一週間の休暇が先だ。」
リナが笑いながら、
「まぁ、何かありゃ、休暇なんか切り上げりゃ
「ドンチャン騒ぎって・・・」
ただでさえ、街を破壊しそうになったのに、
羽目外した、彼等がまた別の物を壊したら、
一抹の不安から、あんまり、派手な事しないでくれぇ、と心の中で願うルーナであった。
「えっ、予約を取り消してくれって?」
「スミマセン、スグル様、今、大口の予約が入ってしまい。」
「でも、俺のほうが先だよね。」
「そうなんですがぁ。」
そうって、
俺は、飯を食うために外に出るつもりだったのだが、
まだ、日は傾いて無い、もう少し我慢して、此方の旨い酒と
一応、俺は二十歳過ぎてるし、
其処で、受付のじいさんにメニューとか分からないので、コースとかセットとか有って、予約出来る店を紹介して貰った。
此方では、その手の店は
此の街はビジネスマンも多いから、予約出来る店は結構有るようで、
予約してから、買い物とか街の見学をしようと決めて、紹介して貰った店に行った。
店は通り沿いの店で、結構、大きい、正面の構えはシンプルで中が見える窓に、自動で引く戸、受付の奥がホールで、四人掛けのテーブルが十五席有る。
夕方から開業するそうで、予約はオッケーだった。
地方のビジネスマン向けにセットメニューも有るそうだ。
俺は、料理や酒の内容が分からないので、一万
別に、俺はクレーマーじゃ無いんだけど、
その時の俺は、少し腹が減ってて、機嫌が悪かった。
ちょこっとだけ、駄々をコネた、ちょこっとだけな。
そしたら、店長が、先方と打ち合わせしたのか、相席で良いかと聞いてきて、
引くに引けない俺は、思わず良いよって言っちまった。
そして、此の決断を、後で、俺はすっごーく後悔する事になるのであった。
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