バルセリア編
第1話 世界への帰還
『神とは、『真理と法則』であり、神の敵対者は、『混沌と無秩序』である、』
アラン・ケイン著『神託論』より抜粋
世界に
世界は絶望に包まれ、人々は滅びを覚悟した、
その時、
コーリン・オーウェル、歳は二十前半、背は百八十を越えて高く、蒼みがかった短い黒髪に、無精髭、瞳は濃い群青色、星に認められ星の力により、万の剣を使う、剣の皇帝と呼ばれた男。
コーリン・オーウェルは
後一本、最後の
彼が七本目の
ドシュ!
えっ!
彼の背中に激痛が走り!
コーリンは背中を振り替える、
血だらけの星短刀、『
「
彼女の瞳には光は無く濁り、
只、
「貴方が、貴方が悪いのよ!コーリン!貴方はあの人の為に世界を救おうとしている!私じゃない!私じゃない!だったら、だったらこんな世界救う価値無いじゃない!!」
グフ!
血ヘドを吐きながら、コーリンは
パルデリアは笑う、「
コーリンは激怒して、思う、
何を言ってるんだ、コイツは!
何故、俺達が一人の人を救わなくちゃならないんだ!
意味が分からん!!
遠く離れた場所で魔人達と戦っていた、
「ダメだ!コーリン!
えっ、傾いているって!
ドガガガガガガガガガガ!!!
大陸程の巨大な
バガギャガガガガガガ!!!
ブァアアアアアアアアア!!
忘却の噴煙が巻き起こり、
噴煙はコーリンに襲い掛かり、
彼を、忘却の千の粒子が切り刻む!
グゥワア!
コーリン・オーウェルがその激痛に悲鳴を上げ!
グゥワアアアアアアア!!!
忘却の噴煙は忘却の大竜巻となり、
コーリンを、
彼の回りにいた
そして更に万を越す魔人達を巻き込みながら
大竜巻より避難していた
「星よ!時よ!、我が友!コーリン・オーウェルを救いたまえ!」
その時、
彼が、『
光は一直線にコーリンに向かい、
コーリンを包み込んだ!
ドシュンンンン!!!
コーリンを含む全てを巻き込んだ忘却の噴煙は、七本目の星剣と共に、
忘却の亀裂に吸い込まれて消える。
グゥアグゥアアア〈コー、オ前ノ負ケダ〉
ドアアアアア〈俺ハ負ケタノカ〉
巨大なマンモスの棍棒が俺に迫る!
バカアァアアアアアン!
「此の城は終わりだ、ゴードン、君は王の反逆者として処刑される、ならば戦って死ぬか?」
俺はまた負けたのか、俺に巨大な
ズゴンンンンン!!
「コールセン、革命は失敗だった、君は明日、断頭台で処刑される。」
俺は失敗したのか、此で何度目だ、
白い刃が俺の首元に迫る。
スッパアアアアアアンン!
「光一、たぶん此の戦争は負けだ、だから残った俺達に出来る事は、あの艦船に特攻する事だけだ!」
そうか、俺達は負けたのか、俺は此で十八回目の敗北、
俺はスロットルを倒して、敵国の艦船に特攻した。
ドガガガガガガガガガガガ!!!
「大江君、君の組合活動は当社、経営陣への反逆とみなす、君は首だ!」
俺は、また負けた、此で二十回目だ、良く俺の心は折れないものだ、
我ながら感心する。
時は夜、俺は夜空を見上げる、力の無い星は、其でも美しく
俺は、何度、此の夜空の星に願った事だろうか、
トン!!
えっ!
俺はゆっくりとホームから線路に落下する。
俺を押した女性は、
黒髪のショートカットに淡い紫の瞳の女性、
その瞳に溢れる涙、
何故!!
俺は叫んだ!!
「
俺の目の前に鉄の箱が迫る。
ザッブンンンンン!
ボコボコボコボコボコ!
俺の口から喉に一気に水が流れ込み、
水!?
俺は必死に息を止め、
グゥワ!グゥワ!グゥワ!
俺は水面に出ようと、呼吸を止めて両手を上へ上へと掻き上げ、足は上に出ようと水を蹴りまくり、
その動作を何度も繰り返し、
時間は永遠のように感じられ、息が出来ない俺にとって我慢の限界に近付いたと思った瞬間、
ブワッ!ゲホッ!ゴホッ!ゲホッ!
新鮮な空気が肺に流れ込み、俺は口の中の水を吐き出す。
世界は夜、暗黒の天界に星は
星に僅かだか力を感じる。
えっ!
力!
此の世界の星には力がある!
まさか、
俺が生きて、死んで、何度も生きてきた混沌の世界の星には決して力はなかった!
たが、此処は違う!
僅かだか、
俺はゆっくりと
力は俺の体の中で、まるで子供のように跳ね回り、喜び駆け回る
ああ、
俺は、数百年の月日、どのくらい此の瞬間を待ち続けた事だろうか、
俺は、
俺は、
帰ってきた!
『
コーリンは、少ない
星はゆっくりとコーリンを持ち上げる。
やがて、水面に浮かび上がった彼は、天に一際輝く、美しい月に気付き、
その月を守護星とした、
自分が愛した女性、
『
「・・・ルーナ」
かっての恋人の名前を想いだし、自然と彼の頬に涙が流れ、髭を濡らす。
髭?
急いで、コーリンは水面に写る自分の姿を見、彼は水面に写るその姿に驚愕して、慌てて自分の髭を、髪を触る。
その姿は、肌の艶や
かって王者のように豪華な衣服も経年変化による劣化でボロボロのコジキ服。
一体、此れは?
その時、彼の前に半透明で薄く緑に輝く時計盤が浮かび上がり、
カチ!
その長針と短針が一目盛り、真上を指して、
ピッタリと重なった瞬間、
バリン!!!
時計盤は音を立てて割れて消える。
えっ!
此れは、確か時と時空の激流から自身を守る為の
『
そうか、俺が此の世界に戻る事が出来たのも、俺が俺として、存在し続ける事が出来たのも、
我が友、
君が、君が俺を守り続けていてくれたからなのか!
コーリンは、自分を守り続けてくれた
右手にうっすらと白く輝く短刀が生まれ、
彼はその短刀で、
ジョリ、ジョリ、ジョリ、
長い
夜風が吹き込み、水面に
波は月光を反射して輝く光のワルツを奏で、
水面に写る月は波打ちながら動きまわった。
寒い!
濡れた体に夜風の冷気がコーリンに突き刺さり、
ズボッ!
えっ?
彼は膝下迄、沈む。
駄目だ、
月灯りにより何とか回りの様子を確認したコーリンは、自分がそう大きく無い湖の中心にいる事がわかり、
彼は少ない
ズボッ!ズボッ!ズボッ!
何とか岸にたどり着いたコーリンは、疲れと寒さでその場で倒れる。
まるで自分の体では無いような感覚が沸き起こり、コーリンは手を何度も握り閉めたり、開いたりを繰り返す。
大丈夫だ、暫くはぎこちないかもしれないが、昔の俺に戻る事は可能だ、
しかし、
一体、此処は何処だ?
スイッチョン、スイッチョン
聞こえて来るのは虫の鳴き声、
ウォオオオオオオオ!!
獣の遠吠えだけ、
町とか村とか無いのか?
コーリンは疲れた体に鞭を打って、立ち上がり、今度は右手に
右手に直径十センチ位の光の玉が生まれ、
スポン!
光の玉に光の羽根が生え、
ゆっくりと羽ばたき始める。
コーリンは羽根の生えた光の玉に祈る、
俺を人のいる場所迄、案内してくれ。
光の玉は羽ばたきながらコーリンの立っている場所から右手に移動しそのまま、コーリンに着いてこい、
そんな飛びかたで、夜道を照らしながら、見ず知らずの土地にいるコーリンを案内する。
体力の無い、今のコーリンには歩く事も苦痛であり、更に夜の冷気がどんどん彼の残った体力を削っていった。
歩きながら、コーリン・オーウェルはボヤク。
あぁ、さみいし、腹すくし、寝みいし、やべえなぁ、俺、もう限界だって、
ハァ、ハァ、ハァ、
だいたい、あの最後の世界じゃ殆ど運動なんかして無かったし、何処行くのも車か電車だし、体がなまっちゃうのも、仕方ねえし、腹だって出ちゃたし、
ふぅ、ふぅ、ふぅ
林と林の間に整備された街道が現れ、彼は直ぐに、街道をチェックする。
コーリンはしゃがんで道路の表面を触りながら、
アスファルト舗装じゃないな、土を何らかの方法で硬めてる、一応、道路を整備する技術があるって事は文明もそこそこって事か?
まぁ、道路は必ず町とか村を結んでいるから、此の街道に沿って進んで行けば、町か村、最悪、一軒家は有るよなぁ。
しかし、持つかなぁ、俺。
ボヤキながら歩き続けるコーリン、
しかし、人里に出て俺は一体どうすりゃ良いんだ?
まさか、こそ泥するわけにもいかないし、
不安になった俺は、ズボンのポケットと上着のポケットを探り、
上着の胸の内ポケットに手を入れると指に数枚の円形の金属の感触が有り、
その金属を取り出して見ると、黄金の円に月の模様が彫られ、その模様が月の光に反射して美しく光輝きながら浮かび上がる。
「
そうだ、此れはルーナの
彼は金貨に話し掛ける。
なぁ、お前達、一体、どのくらいの年月、お前達は俺と一緒だったんだ?
勿論、金貨は答えを返す事は無く、
コーリンは、ただひたすら夜道を歩く。
えっ?
林を抜けて見た景色に、コーリンは驚く。
街道の両側は水平線迄続く牧草地帯、
もしかして、町か村は更に此の先って事?
コーリンを案内している光の玉は、そうだよってな感じで体を上下に振る。
無理、野宿決定って、
コーリンは牧草の一角に小さな木造の小屋が有る事に気づく。
? 牛小屋、にしては小さくないか、まぁ、兎に角、夜風は
コーリンは、再び歩き始め、小屋に到着した彼は両引戸の入り口を少し開けて、中を覗く。
・・・納屋か、鍵は、掛かって無い、無用心だなぁ、まぁ、都会じゃ無いし、こんな
まぁ、此処で一晩過ごすにしても、俺、都会っ子だから虫とかダニとか、ましてゴキブリはだい嫌いだから、
コーリンが指を動かすと、彼の回りを楽しそうに飛んでいる光の玉が、彼に近付き、
ホゥンワァアアア
光輝きながらその光はどんどん大きくなり、コーリン全体を薄く包みこむ。
うん、良し、此れなら虫位なら大丈夫、
しかし、
かって、山をも破壊した魔人の一撃を防いだ『
・・・
・・・
・・・
まぁ、いいか、寝よう。
余りの情けなさに、言葉すら出ないコーリン・オーウェルであった。
彼は急いで藁山の中に潜り込み、
直ぐに、その意識を手離すのであった。
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