第6話
いつもよりも二時間くらい早い朝
おばあちゃんを一人にしないために
交代で泊まった通夜会場で目を覚ます
顔を洗って
真っ黒な喪服を着て
蝋燭に灯をともして
半分に折った線香をあげる
軽く朝ごはんをたべる
あと30分もしたら親戚の人が来る
それまでに荷物をまとめてしまおう
あと一時間もしたら和尚さんが来てくれるから
それまでは
はじめて会うような親戚にお茶を出す
涙が止まらない
おかしいな
さっきまで現実感がなかったのに
和尚さんがお経をあげ始めたら
涙が
おばあちゃん
おばあちゃん
おばあちゃん
お経が終わって
棺に花を入れる
私は5番目に
別人のように痩せてしまったおばあちゃんは
埋もれそうな花に包まれた
ユリが好きなおばあちゃんのために
おじいちゃん、ママ、おじちゃんから白いユリが入れられる
そこに赤いカーネーションが二本
今まで母の日をちゃんとやらなかった後悔っておじちゃんが
本当に止まらない
これがさよならって
嫌でも実感できてしまって
化粧崩れなんて関係なく涙をぬぐう
火葬場、収骨所
涙はとまったのに
もう言葉が出てこない
葬儀が始まる
孫代表として
始まる前に簡単な説明を受ける
始まると
止まったはずの涙が溢れ出した
おばあちゃんとやったり行ったりした
あれこれがどんどん流れてくる
だから
弔辞なんてまともに読めなくて
現実感がなかった言葉が
涙を引き寄せて
やっぱりお経の力ってあるのかもしれない
なんて考えてしまうくらい
和尚さんが口を開く度に
お別れなんだって
じわじわと
和尚さんから
さみしい、かなしいと言う気持ちは
おばあちゃんを愛していたからだって
でも悲しみ続けるんじゃなくて
今を大切に生きる必要があることを
おばあちゃんは教えてくれたんだよって
葬儀のあとの会食では
おばあちゃんの好きなウニがでた
おばあちゃんと一緒に作ったふきのとうの天麩羅もでた
胸がいっぱいで
なんだか全然食べられなくて
会食に来ていたあったこともない親戚たちと
おばあちゃんの話をしながら
お酒を飲んで
今まで知らなかったおばあちゃんの話を聞いて
おばあちゃんと会えなくなってから
おばあちゃんのことを知るって
なんだか不思議だったよ
でも
嬉しかった
おばあちゃん 露薫 @tsuyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。おばあちゃんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます