第5話

ママに連れられて入った通夜会場



線香の匂い

葬式の写真

花に囲まれて

棺に入って

冷たくなって



おばあちゃんってこんなに痩せていたっけ

まるで別の人みたい

冷たすぎてお人形みたい



ママがおばあちゃんの顔に手を当てる

どうしたのって聞いたら


こうやって温めてたら生き返らないかなって思ってって


そんなママがなんだか見ていられなくて


おばあちゃんのことを

苦しまなくてよかったとか

がんばったとか

いつかは来る別れだからとか


そんな言葉を言われる度に上滑りしていく



おじいちゃんとママが二人で話すおばあちゃんは

まだなくなってなんかいなくて

元気で


おかあさん実は糖尿だったんだよ

ずっと俺に内緒にしてて


おかあさん甘いもの好きだから

止められるのが嫌だったんじゃない


かあさんブドウかったら食べるかな

かあさんブドウ好きだし買ってってやるべ


そんな話を聞きながら

どこまでが現実なのかわからなくなる


ママに頼まれて

おばあちゃんに最後の化粧をする



私が人生ではじめて他人にした化粧って

今日、おばあちゃんにたいしてなんだよ?

知ってた?

冷たい肌に発色の悪いファンデーション

真っ白なほっぺにほんのりピンクのチーク

眉頭をぼかしてアイブロウ

仕上げに紅をさす


おばあちゃんがいつもしていた化粧よりも薄めの

素っぴんみたいな化粧

血色をよくみせるための化粧

本当にまるでお人形のような



おばあちゃんにこれから手紙を書く

孫代表として弔辞を読むために

思ったこと

形式張らないほんとの気持ち

誰かから言われた上滑りする言葉じゃない

そんなことばを綴ろう


現実感のない今を綴ろう

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