21.真っ当に

今まではそれでいいと思っていたことが それでは駄目な時がいつか来る

そのいつかが来ても 考えを変えずにいたらどうなるのだろう

悔悟の念に取り憑かれるだろうか 取り付く島もなくなるだろうか

今考えを改めれば――せめてそれでいいのかと思い直せば 少しでも真っ当に近づけるのだろうか


人知れずまっすぐに生きて それだけが取り柄の人間になって 弥終に思い悩む

時間はないと決め込んで 人の心は解らないものだと決めてかかり 「死人に言う言葉はない」とそんな寂しいことまで言う

元を正せば 人が人として生まれるから人は死ぬ だから人は生まれぬがよいのだと 斯様な恐ろしいことを考え付き 事実そうだろう?と心の中でも思っている


真っ当には程遠い まっすぐだろうが何だろうが甚だ愚かしい

そのことを解ろうともしていないのだろう 教養に人間性は不要だとする見解を 路上に転がし面白がっている

甚だ以て不快なこの大愚には 親も子もいないと謂う

今までもこれからもそうであり続けるこの者に 心など望む方が間違いであった

理解の外に土俵を拵え 独り相撲を楽しむ そんな者が世界に従う訳がなかったのである


今まではそれでよかった 駄目な時などなかったのだから

でもいつか必ず これでよかったのかと考える時が来る

その時は思う存分考えるべきなのかも知れない

考えを変えたからと言って それがつまりは世界に従うということにはならないのだから

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