22.葬す

「死ぬ」とは腐っていくことなのだろうな

腐った体に どこからともなく蛆が沸き 皆食われてしまうことを言うのだろうな

そしてそうならないように 遺った体を冷やし続け それが文字通り防腐の役割を果たすのだろうな


人が 死ぬと同時に溶けてなくなる存在じゃなくて良かった

腐る という過程があって本当に良かった

その間にお別れを言える お蔭で最期の顔を拝める


葬り方は違えど どれも存在を消すために 焼いたり 埋めたり 喰わせたりするのではない

存在はそういうことでは消えない

存在が消えるということは お別れの言葉を言わなかったことになるということだ

最期のその顔も拝まなかったことになるということだ ――でもそうじゃない

「その間」も「お蔭で」も確かにあったのだ だから言えたこと だから拝めたこと


遺った体をずっとは冷やし続けられない 防腐の役割は一時的なもの

焼くにしろ 埋めるにしろ 喰わせるにしろ ちゃんと葬ってやらなければならない

どこの馬の骨とも判らぬ蛆に食わせる体など何処にもないのである

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