19.その人

また一人亡くなりました

意識も戻らぬままに逝ってしまいました

亡くなるまでに 手を上げたり 目を開けたりしましたが それで最後でした


世の中では 生き返る人がいると聞きます

そういう人の中には 火葬の直前に生き返った人もいたとも聞きます

生き返ればまた話せます 生き返ればまた笑い合えます

そのとき涙を流すでしょうが それは言わずもがな嬉し泣きです

悲しむ人のいないその中で 誰もが後悔のない時間を過ごせるでしょう


その人は確かに生きていたのです

意識は戻りませんでしたが 生きてさえいてくれればそれで十分でした

亡くなる必要などどこにもなかったのだと思います

その必要はなかったのだと今でもそう思います

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