18.その顔
言葉は掛けない そう決めていた
亡くなった人に掛けられる言葉はないと
亡くなった者にはもうこの世の言葉は届かないと
だからあるかどうかも定かではない心の中でありがとうを言った
その顔を見るだけで目頭やら胸やらが熱くなった
でもそれは悲しいからというだけはなく 感謝の気持ちが溢れてきたからだと感じた
それなら悲しむばかりではいけないのかも知れない
思い返す記憶の中に悲しいものなどない 悲しいのはその顔を見たからだ
まだ生きているようだと誰かが言ったその顔を見て嗚呼・・・と思ったからだ
なぜ布など掛けるのだろう――苦しそうではないか
生きている者と死んだ者をどうして区別する必要がある?
一度その布を掛けてしまったら二度と取ることが出来ないではないか・・・
その顔に触れられなかったのは死んだ者の冷たさを知っていたから
その冷たさは一度知れば十分なのだ 忘れることなど決してないのだから
言葉は掛けない 後悔するかもしれないが納得尽だ
亡くなった人に掛けられる言葉はないときっとそう思う
亡くなった者にはもうこの世の言葉は届かないときっとそう考える
だからその時もあると信じている心の中で感謝の言葉を述べるだろう
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