14.その目

あとはその目を開けるだけ 家族の姿を見つけるだけ

それだけなのに それ処ではないあなたの目は 閉じられたまま 開くことはない


その閉じた目であなたは何を見ているのか

夢を見ているのなら 再び開けた時に 見ていた夢について教えてほしい

夢も見ず 暗い中にいるとしても 再び開くのなら 「暗くて怖かった」と安堵の表情を浮かべて そう言ってほしい


家族の願いはもう一度目を開けてくれること あなたもそれを望んでいると信じたい

皆の言葉が聞こえるだろうか? 一人一人の想いが欠けずに届いているだろうか?

一心に 切に 皆が待ち望んでいる あなたのその目が今にも開かれるのを・・・


そうして開かれたその目に 皆が歓喜した 感涙し さらなる期待に満ちた

もう一度 もう一度と あなたはその目を開け 皆を見てくれた

家族の願いを あなたも望んでいたのだと そう思うことが出来て嬉しかった


開かれたその目であなたが何を見ているのか それはあなたしか知りえない

その目は確かに黒いが 「見ている」かどうかは定かではない

それでも あなたが開けてくれたその目は あなたが生きているという確かな証――


あとは意識が戻るだけ 家族のもとに帰るだけ

本当にあとそれだけなのに あなたの意識はまだ戻っていない

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