第10話 日常へ

アリスさんと一緒に、霜月駅に来た。

もちろん、余裕を持ってきた。


「治朗さん、どの鏡か覚えています」

「確か、これでした」

俺は、奥から3番目の鏡を指差した。


「治朗さん、もうじき深夜の0時です。」

「うん・・・」

ドキドキしてきた。


鏡には普通に俺が映っている。

もちろん、アリスさんも一緒だ。


時計の針は、確実に0時を目指している。

そして、0時になった。


すると、鏡の中の俺が語りだした。

「どうでしたか?その世界は?」

「この世界ですか?」

「もし、あなた・・・というのも変ですが、共学という選択肢を選んでいたら」

「ああ、悪くはなかったです。でも・・・」

「でも?」

「やはり、元の正解がベターです」

「俺も、同じ考えです。男子校に行ってたらどうなっていたかは、考えいました。

それなりに、楽しかったですが、やはり俺も、元の世界がいいです」

「考える事は同じですね。」

「そうですね、同じ俺ですからね」

自分同士で話すのは、不思議だ。


「でも、どうしてあなたがその話を?」

「そこにいるアリスから、聞いた通りです」

「そうですか?」

「でも、驚きましたよ。この世界、紙幣の肖像画が変わってるんですね」

「こちらも、変わってなくて驚きました」

しばらく、談笑する。


「戻りますか?そろそろ」

「そうですね」

「でも、どうやって戻るんですか?」

俺は、鏡の中の本来のこの世界の、俺に訪ねた。


「アリスから、DVD見せてもらったでしょ?あれと同じです」

「そうですか」

俺は鏡の中の自分と手を合わせようとした。


「治朗さん、待って下さい」

「えっ」

アリスさんは、俺にキスをしてきた。


「お早うのキスをしませんでしたからね。そのかわりと餞別です」

「ありがとうございます」

「あっ、でも・・・」

俺は、鏡の中の俺を見る。


「大丈夫です。アリスはキスくらいなら、誰にでもしますので」

「誰にでも?」

「ええ、ファンサービスでも、するくらいです」

変わった人だ。


「では、治朗さんお元気で」

「アリスさんも、それともうひとりの俺も」

「そちらもお元気で、お互い頑張りましょう。今の世界を」

「ええ、今の選んだ世界を」

そうして、俺は鏡の中の俺と、手を合わせた。


また、光りだした。


すると、鏡の前に立ちすくしていた。

アリスさんはいない。


「あっ、スマホ」

確認してみる。

「よかった。知っている人ばかりだ。いつも通りだ」

俺は安心した。


こうして、元の生活に戻った。


学んだ事は、あの時別の選択をしていても、結局は今の自分になるということだ。

向こうの俺が、アリスさんと幸せになることを、祈ろう。


こうして、いつも通りの日常が、また始まる・・・

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パラレルワールド 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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