第3話  時間軸


「時に、アリスさんでしたっけ?君の世界の俺は、どんな仕事をしてるんですか?」

「アニメ雑誌の、レポーターの仕事をしています。

私との馴れ初めは、あなたの取材です」

「俺の取材?ということは・・・君の職業は?」

「はい。声優です」

声優さん?かなり若く見える。

俺は20代後半・・・アリスさんは、いくつなんだ?


「あのう、アリスさん・・・女性に訊くのは失礼なんですが・・・」

「歳は、34歳ですよ。かなりの姉さん女房ですね」

最近の女性声優さんは、姉さん女房が多い。

まあ、それは気にしないが・・・


「で、いつ結婚したんですか?」

「まだ3週間ですよ。新婚さんですね」

新婚さんか・・・


「ハネムーンには行ったの?」

「まだですよ」

「訊きにくいんですが、行ってらっしゃいのキスとかは・・・」

「もう、毎日べたべたです」

でもそれなら、なぜ「お早うのキスをしなかった?


「今度は、本来のあなたを教えていただけますか?」

「ああ、ごめん。俺は大学卒業後に、自分で会社を立ちあげた。

ゲームの会社だ。気がついたら、会社になっていた。」

「そうなんですか?大変でしたね」

「いや、それなりに楽しいよ。出会いはないけどね」

そう、出会いはない。

だから、結婚なんて出来るはずない。


「もしかしたら、どこかで入れ替わったのかもしれませんね」

「そうでしね」

「昨日の行動を、教えていただけませんか?」

「昨日の行動か・・・」

俺は思い出してみた。

昨日なので、記憶は新しいが、やはり飛んでいる部分もある。


頑張って思い出そう。

この世界の、本来の俺も困っていると思うし・・・

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