あたしのリベンジを受けなさい

     thread6


「あ、ミノルくん? 麗奈です。今電話いい?」

『れ、麗奈ちゃん?!』

「ねえ、ミノルくん、今ヒマ?」

『え? ヒマって… まあまあだけど、、、』

「パソコンのもので買いたいものがあるんだけど… あたしわかんないから、つきあってくれない? 今から」

『えっ?』


スマホの向こうから、ミノルの驚いた声が返ってくる。

そりゃあ、高嶺の花のあたしからいきなり誘われれば、カノジョいない歴=年齢の童貞キモヲタくんは、びっくりするわよね。

慌てた様子で、ミノルはどうでもいいことを口走ってきた。


「ヨ、ヨシキは、、、?」


こいつ、バッカじゃない?

あたしから誘ってる最中に、他の男のことを切り出すなんて。

そういう女心がわかんないから、いつまでたっても童貞なのよ。


「まあ、、 ね。ちょっとミノルくんとお話しとかもしたかったし」

「わ、わかった。じゃあ、どこで待ち合わせればいい?」


ようやくミノルも覚悟を決めたらしい。

わたしたちは待ち合わせの段取りを決めると、外出の支度をする。

記念すべき童貞くんの初デートなんだから、こちらもお洒落してあげなくちゃね。




「ごめ~ん。急に呼び出して」


 待ち合わせの私鉄の駅前で、改札を抜けたわたしは、入口で待っていたミノルの側に駆け寄った。

いかにもロリコンヲタの好きそうなロリータファッション。

ツインテールを大きく揺らし、真っ赤なチェックのミニスカートをひらめかせる。

両腕を軽く曲げて振りながら走る姿が、いかにも女の子っぽくて萌えるはず。


「よ、よく、ぼくのケータイ番号わかったね」


少し頬を染めながらハァハァと息を弾ませるわたしに、ミノルが言う。いかにもテンパってるらしく、その声は少し震えて、どもってた。

上目遣いにあたしはミノルを見つめる。男って、小柄な女子が下から見上げるシチュエーションに弱いはず。


「こないだヨシキが、あたしのスマホからミノルくんに電話したじゃない。その履歴が残ってたの」

「そ、そっか」

「よかった。今日ミノルくんに会えて」

「え?」

「さ。行こ!」


そう言ってわたしは、ミノルの腕を取って歩きはじめた。

わざと胸をくっつけてみる。

こういうボディタッチも男の気を惹くためのテクニック。

そうやって、ポイントを稼ぎながら、ミノルをあたしの虜にしてやる。

どうしてこのあたしが、こんなキモデブサヲタを誘ったかって、、、


それは、ヨシキのやつにリベンジしてやるためだ。

あたしをモノ扱いして、プライドをめちゃくちゃにしてくれたお礼は、きっちりしなきゃいけない。

鬼畜ヨシキにもウィークポイントはあるはず。

自分よりランクが低い男に、彼女を寝取NTRられるのほど、屈辱的なことはない。

ましてや、その相手が自分の無二の親友だったら、きっとヨシキも友情と恋愛の板挟みになって、苦しむはず。

それこそがきっと、友情を大切にするヨシキの最大のウィークポイントだ。


そうやってくっついて歩いてると、ミノルはしばらくして、組んでいる腕と反対の手をズボンのポケットに入れ、なにやらゴソゴソとはじめた。

なんか、腰が引けてる。


こいつ、、、

大っきくなったアレの位置を直してるの?

キモッ!!


そういう自分の状態を隠そうとしてか、ミノルはしどろもどろに話はじめた。

なにも気づかないふりで、あたしは可愛く応える。


「そ、そう言えば、『パソコンのもので買いたい』って言ってたけど、なにが買いたいの?」

「レタッチソフトなの」

「『Photoshop』とか?」

「うん。カメコさんからデータもらって、それを自分でもレタッチとかしてみたいって思って。CGとかも作ってみたいし」

「そうなんだ」

「ミノルくんフォトショ(Photoshopの略)使ってるんでしょ? 結構難しいの?」

「まあ、、、 初心者がいきなりCGは、難しいかも」

「え~っ。ほんとに? やだ~」

「最初はやっぱり、だれかに習った方がいいよ」

「え? じゃあ、、、 ミノルくん、教えてくれないかな?」

「えっ。ま、まあ… いいけど、、」

「ほんと?! やったぁ♪」


そう言って笑顔を見せ、あたしはミノルの二の腕をポンとたたいた。

電車に乗って秋葉原に着くまで、あたしはなにかとミノルのからだに触れて、腕を組んでみたりした。

デレデレした様子で、ミノルはあたしの言うことをなんでも聞いてくれる。


やっぱりボディタッチってのは、物理的に効果あるわぁ。

だいいち、このあたしに触られて、嫌がる男なんていないし、、、

男なんてみんな、おっぱい星人だしね。


つづく

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