デートであたしをもてなしなさい
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「え~っ。ヨシキ、明日も仕事で忙しいのぉ? いつになったらデートできるのよぉ?!」
『いつって… 昨日カラオケに行ったばかりだろ?』
「昨日はミノルもいっしょだったじゃない。あんなのデートじゃないよ」
『そのあと、ホテル行ったじゃん』
「ええ〜っ? ヨシキにはあたしとのデートって、エッチするだけなの? 最低~」
『そういうわけじゃないけど…』
「じゃあ、ちゃんとデートしようよ。駅前で待ち合わせして、可愛い服着て、ばっちりメイクもして。
美味しいレストランでランチしたあとは、ショッピングとかぁ、カフェでお茶したりとか。
明日はあたしもバイト休みだしさ。原宿あたりに出かけて服とか見ない?
ヨシキの好きそうなアキバのショップに寄ってもいいよ」
『だから、明日は仕事だって』
「え~~~~。仕事ったって、ヨシキもただのバイトくんでしょ? そんなの適当に口実つけて、休んじゃえばいいじゃん」
『バイトっても、もうすぐ正式採用されるし、責任重い仕事も任せられてるから、おまえのお気楽バイトとは違うんだよ』
「あたしとバイトと、どっちが大事なのよ」
『あのさあ。。。 較べるベクトルが違いすぎるだろ』
「ん〜、、、 じゃあ、次の休みはいつなの?」
『土曜だけど、その日は…』
「ええっ?! わたしもその日休み!
何時頃から会おっか?
行き先はわたしが決めていい?
最近見つけたイタリアンでお昼食べたいなぁ~。
ヨシキが奮発してくれたら、わたしもいろいろやってあげるから、美味しいもの食べよ♪ それから…」
『、、、悪い。その日はもう、撮影が入ってんだよ』
「え? 休みって言ったじゃない。なんの撮影?」
『ん~、、、 個撮』
「個撮って… だれ撮るの?」
『別に、、、 だれでもいいじゃん』
「ひどい! わたしとデートするって言ったじゃない!」
『…(言ってないし)』
「約束破るつもり?!」
『…(約束とかしてないし)』
「わたしを裏切るなんて許せない! なんとか言いなさいよヨシキ!」
『、、、すまん』
「嘘つかれて、わたしがどんなに傷ついたか、ヨシキにわかる? 悪いと思うなら、ちゃんと穴埋めしてよね」
『…(嘘とかついてないし)』
「で。だれを撮るの?!」
『だ~か~ら~、、、 だれでもいいだろ。麗奈に関係ないじゃん!』
ヨシキの声は次第に熱を帯びてきて、興奮しているようだった。
わたし、納得いかない。
恋人(作者註*自称)のわたしを放ったらかして、他の女を撮るなんて。
それも、貴重な休みの日によ?
ヨシキのことだ。
すぐに手を出すに決まってる。
そんなの許さない!
わたし以外の女とエッチするなんて!!
あのビッグマグナムを、他の女に連射するなんて!!
しばらくの押し問答の末、ようやくヨシキは個撮相手を言った。
『美月梗夜』
その子、、、
こないだのイベントで見かけた。
背が高くてスレンダーな美人だったけど、ツンとした感じで、ワガママそうな女だった。
ポージングはまるっきしヘタクソで、場末のコスプレショップで買ったような、安っぽい衣装を着てたっけ。
あんなのでコスプレイヤーって言えるの?
きっと自分の可愛さを鼻にかけて、お高く止まって、世の中なめきってるJKね。
全然わたしの好みじゃない。
そういえば、その前のイベントじゃ、カメコに囲みされてて、パンツとか撮られてた。
棒立ちでオロオロしちゃって、まさに典型的な『着ただけレイヤー』。
笑えるわ。
なのにヨシキは、そんなつまんない女を撮るわけ?
、、、なんかムカつく。
『わかったよ。じゃあ、明後日、仕事が終わって会おうな』
すったもんだの末、ヨシキはやっとデートに応じた。
会いたいなら最初からそう言えばいいのに、、、
ヨシキってあたしのこと焦らして、楽しんでるかも。
案外ひねくれ者。
「絶対よ。ドタキャンとかしないでよ」
『わかったよ。オレそろそろ仕事しなきゃいけないから…』
「わたしだって仕事中~。ヨシキったらほんっと、電話長いんだから… 困るのよね。じゃ」
『…』
スマホを切り休憩室を出て、トイレで軽くお化粧を直したあと、わたしはエプロンを締め直し、カフェのホールに戻った。
「遅いわよ三崎さん。とっくに休憩時間終わってるでしょ」
男もいなさそうな干からびかけた年増のチーフが、ヒステリックに言ってわたしを睨んだ。
あ~。やだやだ。
ちょっとわたしが可愛いからって、この手の女はなにかにつけて文句言ってくるのよね。
そんな性格だから顔つきが陰険になるし、男も寄ってこないのよ。
まあ、今のわたしにはそんな些細なことはどうでもいい。
それより明後日の、ヨシキとのデートが楽しみ♪
バイトのあとで夜からしか会えないけど、翌日は夕方からの出勤だし、朝までいっぱいいちゃつけるわよね。
つづく
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