第20話 他のやり方

 廊下で茜さんに大宮君と付き合う宣言をされてからというもの、茜さんから僕に話しかけてくれるということがなくなった。それどころか、僕が近づくと、いやな顔をされるようになってしまった。

 3学期まで時間がないのに、前よりも関係をこじらせてしまった気がする。

 そして、僕は思い出した。茜さんが事故にあうことを、大宮君には話していたということに。怖いけれど、大宮君に相談するしかなさそうだ。

 そう思って大宮君に話を切り出したんだけど……。

「は? 俺にどうしろってんだよ」

「いや、だからあの、茜さんが事故に……」

「知ってる。お前から聞いたことだしな。でもよお、それって別にお前がどうにかしないといけないわけじゃねえだろ?」

「それはどういう……」

「事故の日、俺が一緒に本田と帰ってそのルートを避ければいいだけの話だろ」

「それはだめだ」

「なんでだよ」

 だって、茜さんは大宮君と却って事故にあったから。帰っている途中にけんかになったから。たとえルートを変えたって、けんかすることには変わりないだろう。起こって帰った茜さんがその道を通るということも大いにあり得る。

 なんて、大宮君に言えなくて。

「てめえが本田と一緒に帰りてえだけだろ」

「そんなことは……」

「あるだろ。ばかにすんな」

「ひっ」

 僕が大宮君にひるんでいると、

「まぁまぁ。大宮は顔が怖いから、いい方はもう少しオブラートに包まないとね」

「奏汰⁉」

「んだよてめえ、どっから沸いた」

「沸いたっていうか、結構前からいたんだけど二人が気付いてくれないから」

「え!」

「影が薄いんだな」

「それより、大宮と本田は付き合うことになったんだ?」

「そうだ。悪いかよ」

「悪くはない。さ、慧斗、行こう」

「え⁉ ちょ、僕はまだ大宮君と」

「いいんだよ」

「よくないよ⁉」

 奏汰は強引に僕を自分の席に座らせると、強い口調で言っていた。

「あの2人のこと、聞いてないんだけど」

「いやあ、言ってないからね……」

「大事なことだろ、俺に相談しないでどうするんだよ」

「そんな過保護にならなくても」

「過保護じゃねえし。それに慧斗、1人じゃどうしようもないでしょ」

「悲しいけど反論できないなあ」

「だった俺に相談しろって」

「うん……」

「まあいいや。俺にいい考えがある」

「?」

「お前がだめなら俺がってな。幸い俺はひまりとは普通に話す。その流れで本田にも接触できるだろう。そうすれば、慧斗にももう一度チャンスが巡ってくるってわけだ。時間がない、急いで動くぞ」

「待って。そんなんで僕が話せるとは思えない」

「そこはほら、俺がいるから」

「ええー」

 少し無理のあるやり方だと思うけど、それよりいい方法が僕には思い浮かばないので、それに従うことにする。

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