第19話 衝撃
時の流れは速いもので、茜さんと名前で呼び合おうと話した日から約2月がたっていた。今は11月11日。ポッキーの日だ。ポッキーの話をするつもりはないが。
あれから特に問題は起きず、平和な日々が続いていた。
でも、気になることが一つある。10月半ばあたりまではよく僕のところに来ていた茜さんが、最近大宮君と妙に親しげなのだ。
まぁ、誰が誰と仲よくしようが、それはその人たちの勝手だから僕がどうこう言えることではない。しかし、今まであまり自分から茜さんに話しかけていなかった大宮君が話しかけているのが少し気にかかる。なんて、ちょっとモヤモヤしちゃったりして。
僕は本田さんと仲良くなって、事故の日に一緒に帰れればそれでいいはずなのに、最近高望みが過ぎている。気を付けなければならない。
それに、茜さんが大宮君と話して僕と話す時間が減ったのは、僕が自分から話かけることができないことも原因の1つだろう。
ここは1つ、自分から話しかけてやろうじゃないか。
席を立ち、読書をしている茜さんの方へ向かう。
「ねぇ、茜さん」
「ん? あぁ、慧斗君。どうしたの?」
「えっと、あの……」
しまった、話す内容を考えてこなかった。
「今日も、いい天気ですね……」
「え?」
何言ってるんだこの人は、という目つき。頬を冷や汗が伝う。
「えっと、なんでもないです。ごめんなさい。失礼しました」
さっさと退散しようとすると、
「あ、ちょっと待って!」
「え」
「私も慧斗君に話したいことがあったの。ちょっと来て」
「えと、どこへ?」
「んー、廊下? 人前で話しにくいことだから」
「え……」
なぜか真剣な顔をした茜さんに腕をつかまれ、廊下に出る。
「話って?」
「うん。あのね……。私、颯に告白したの」
羞恥のかけらもない顔でそう告げてきた。
「え、それって修学旅行の後に……?」
「うん。先週」
「大宮君の返事は」
「OK、だって」
「!」
「ありがと。慧斗君が手伝ってくれたおかげだよ」
茜さんが笑う。
「僕は何もしてないじゃん……」
「ううん。慧斗君は、ちゃんと私の役に立ってくれた。でも、もう手伝ってくれなくていいよ」
「え?」
「今まで、ありがと。じゃあ、私行くね」
にま、と笑って教室に入っていく茜さん。その笑い方は、いつもの茜さんの笑い方ではなかった。
廊下に一人取り残される僕。
考える。
茜さんと大宮君は付き合い始めた。それは、僕が茜さんと一緒に帰りにくくなるということだ。しかしそれはこの際どうでもいい。それ以前の問題。
「僕は、駒として使われただけ……?」
もしそうだったら、茜さんが大宮君と付き合ったら、もう僕と話す理由なんでないじゃないか。
彼氏持ちの女子に一緒に帰ろうなんて元から言いにくいのに、もしそうだったら、断られる可能性が高いじゃないか。
今の僕は、何をするのが一番正しい?
一人、廊下で考える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます