第21話 作戦実行

 12月1日。

 あれから、奏汰の考えた作戦が始まった。

 ひまりさんは大宮君と一緒にいることが多い。奏汰と大宮君はあまり仲良く見えないけれど、さすがは奏汰というべきか、うまく話している。僕はそれよりも大宮君とひまりさんが一緒にいて茜さんは何も思わないのかというところが気になる。普段から一緒にいる人だと気にならないものなのだろうか。

 僕がそんな疑問につて考える暇もなく、作戦は進んでいく。

 奏汰が二人とよく話すようになった。そしてそこに時々茜さんの姿もある。奏汰は茜さんがいるときに僕を自然な流れで会話に誘ってくる。もちろん、怪しまれないよう茜さんがいないときにも話してはいるが。

 はたから見れば、最近仲がいい少し不思議な人たちみたいな感じだろう。まあ大体間違ってはいないけれど。

 茜さんがいるときに僕が話に参加すると、茜さんは少し気まずそうにする。もちろん話しかけてはこない。

 でも、気まずそうな顔をするというのは、多少なりとも僕に対して罪悪感があるからではないだろうか。全く何も感じていなかったら、もっと僕の事なんか気にしないだろう。

 今日も今日とて、僕にとっては戦場の、ほかの人にとっては他愛もない世間話が繰り広げられている。

「あーそーだみんな! この前新しくできたカフェ行った? ほら、なんかオシャレな感じの!」

「ああ? んなもん行ってねえしできたことすら知らなかったよ」

「マジ? ちょーウケるんですけど!」

「あ? なんか文句あんのか?」

「べっつにー? 颯らしくていいんじゃない?」

「お前……!」

「奏汰君は、もう行ったの?」

 めずらしく頬を赤らめて聞くひまりさん。それを奏汰がそっけなくあしらう。

「行ったけど」

「嘘⁉ か、彼女ととか?」

「そんなのいないよ。友達とだけど」

「え! 奏汰が僕以外の友達とおしゃれなカフェに行ったの⁉ 僕ショック!」

「なんでだよ」

「そーゆーけーと君は? あんまイメージないけど」

 一瞬返事に迷うも、これはチャンスだと思いなおし応答する。

「行ったよ。茜さんと一緒に」

「ちょ、慧斗君……!」

「? だって、一緒に行ったよね?」

「行った、けど……」

「マジ? 2人で行ったの? びっくりだよ」

「えー、おどろかないでよ」

「ごめんごめん」

「あ、あの。私と慧斗君が一緒に行ったのは一回だけだから」

「ふうん? いつの間に名前呼びに!」

「あ、これは、その……。と、とにかく、慧斗君といったのは一回だけ! そこ大事!」

「はいはい」

 あわあわしながら話す茜さん。そりゃまあ彼氏の前でこれを言われたらうってなるだろうけど、少し悲しい気分になるなあ。

「僕は、茜さんとお話しできて楽しかったよ」

 あえて、爽やかスマイルで切り返す。

「おー! けーと君大胆!」

「え」

「まさか慧斗にそんなことが言えるとは……」

「え、え?」

「け、慧斗君、話があるから、あとで私のところに来て……」

「あ、はい」

 ややお怒りモードになっていらっしゃる茜さん。まあ、気にしない、気にしない。その話というときに自分の気持ちがっつりぶつけてやればいい。

「颯、急に黙っちゃてどーしたの?」

「や、何でもねえよ。俺もそのカフェ、行ってみっかなと思ってよ」

「うんうん、それがいいよ! いっそのことみんなで行っちゃう⁉」

『それはない』

「全員にそれを言われると悲しい!」

 と、少し盛り上がったところで解散した。

 久しぶりに複数人で楽しめの会話をしたので、いい気分だった。これからのことを考える時が重くなるけど。

 茜さんのところに行くのは放課後にしよう。話しながら自然と一緒に帰れたらとてもいい。

 僕も上手に話せて和解。理想だ。でも、何の根拠もないけれど、今の僕にはそれができそうな気がする。そう思うと、放課後が少し楽しみになってきた。

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