死んでも蘇る少年
まつも
死んでも蘇る少年
――少年Aのはなし――
むかしむかし、あるところに、Aという少年がいました。
少年Aは、いたって普通の子供でしたが、ある日の夜、その少年の下に、1人の死神がやってきました。
「おい。そこの少年」
少年は、その死神の姿に、興味を惹かれました。
「どうしたの? 真っ黒のおじさん」
「もし、君の願いが一つだけかなうなら、何をお願いする?」
少年は、しばらく考えた後に、「たとえ死んだとしても生き返れるようになりたい!」と、言いました。
死神は、それを聞いて頷くと、少年Aの下を去っていきました。
それから十年。
少年Aは、クラスで周りのみんなになじめず、いじめられていました。
次第に少年Aは、もう死んでしまいたいと思うようになりました。
ある日、少年Aは、学校の屋上に上がり、下を見つめました。
なかなか飛び降りる決心がつかない。そんなとき、いきなり誰かに後ろから突き落とされました。
バランスを崩して落ちる直前、彼の目には、いじめの主犯格、少年Bの姿が映っていました。
少年Aはこう思いました。
――死にたくない!!――
目を覚ますと、少年Aは自分の部屋にいました。
なぜなら、少年Aは死んでも蘇る少年だから。
――あれは夢だったのだろうか。――
少年Aは、十年前のことを覚えていませんでしたが、ひとまず生きていることに安堵しました。
でも、少年Aは次の日になってあることを知りました。
少年Bが学校の屋上から飛び降り自殺をした。
少年Aは、ゾッとしました。そして、十年前のことを思い出しました。
しばらくして、少年Aは不登校になりました。
それから1か月。ある日の朝、少年Aの家に少年Cがやってきました。
少年Cは、少年Aを見るなり、近くにあった包丁を持って少年Aを刺し殺しました。
少年Aは、訳の分からないまま死んでしまいました。
目を覚ますと、少年Aは自分の部屋にいました。
なぜなら、少年Aは死んでも蘇る少年だから。
少年Aは、ガタガタと震えながら自分が殺された場所に行きました。
そこには、刺し殺された少年Cがいました。
少年Aは、怖くて動けなくなってしまいました。
その後、少年Aは自分の部屋で首を吊って自殺しました。
目を覚ますと、少年Aは自分の部屋にいました。
そしてそこには、動かなくなった少年Aのお母さんがいました。
なぜなら、少年Aは死んでも蘇る少年だから。
蘇らせるのにも、対価が必要なのです。
――少年BとCのはなし――
むかしむかし、あるところに、Bという少年がいました。
少年Bは、いたって普通の子供でしたが、ある日の夜、その少年の下に、1人の死神がやってきました。
「おい。そこの少年」
少年は、その死神の姿に、興味を惹かれました。
「どうしたの? 真っ黒のおじさん」
「1つ、大切なことを教えてあげよう。今から十年後、君はAという名前の少年に殺されてしまう。気を付けたほうがいいぞ」
死神は、それだけ言うと、少年Bの下を去っていきました。
あまりに印象強い話だったので、少年Bはその話のことを決して忘れませんでした。
それから十年。
少年Bは、Aという名の少年に出会いました。
少年Bは、少年Aのことを恐れていました。
そして、自分に手出しができないよう、少年Aのことをいじめていました。
ある日、少年Bは少年Aが屋上に行こうとしていることに気が付きました。
気になってついていくと、少年Aは屋上の淵にいました。
――今少年Aをやったら、もう少年Aに殺される心配をしなくても良い。――
少年Bは、少年Aを突き落としました。
そして、少年Aと少年Bは、いつの間にか入れ替わっていました。
少年Bは、死んでしまいました。
そして、一連の流れを屋上の下から見ていた人がいました。
少年C。彼からすると、少年Aが少年Bを突き落としたようにしか見えませんでした。
しかし、少年Bは飛び降り自殺をしたことになっていて、少年Cは不審に思っていました。
少年Cは、悩んでいましたが、それから1か月が経ち、ついに不登校になった少年Aの家に行きました。
彼は、少年Bを殺したのは絶対に少年Aだと思っていました。少年Cは、少年Aの姿を見ると、ついカッとして、近くにあった包丁を手に取り少年Aを刺し殺してしまいました。
そして、少年Aと少年Cはいつの間にか入れ替わっていました。
……少年Cも、死んでしまいました。
死んでも蘇る少年 まつも @matsumo1576
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