第7話

 倍数ごとに違う文字ということは、レールフェンスだな!


『CGHEEEOANNSSTEPTRRI3AAT0LLA5L』


 四列に並べ替えてみる。


『 CENTRAL

GENERAL

HOSPITAL

EAST305 』


 中央総合病院東305!? どういうことだ? 何かアクシデントがあったのか? 東305ってなんだ? 入院したってことか?


 急いでエレベーターホールに駆け戻り、苛々しながらやって来るのを待つ。その間に経路の検索をかける。


 一番早く行けるのはなんだ? ……地下鉄か! 


 エレベーターに乗り込むと、頭の中で道筋をシミュレートする。地下鉄の駅まで走り、やってきた電車に飛び込んだ。


 ええっと。落ち着いて考えよう。電車に乗ってる間は何もできないんだから。

 まず、最後の問題だけ手書きだったことは、前もって用意してなかったってことで間違いないよな。つまりあの部屋で待っている予定だった。それが何らかの理由で病院に行くことになって、あの貼り紙の暗号を書いた。でも暗号を考えて書く余裕があったんだから、緊急性はなかったってことか? 追加部分が『東305』なわけだから、病院に行ってみたら入院になって誰かに連絡して書き足してもらったのか?

 ちょっと怪我をしただけのつもりが、行ってみたら傷が深かったとか? お腹が痛い、からの盲腸とか? もっとひどい病気か? 頭が痛い、からの何か怖い病気が見つかったとか? 

 ああ~! 嫌な想像ばっかり浮かんでくる。

 あ!! そうだ! 電話! ずっと出てくれなかったけど、流石にこんな状態なら電話に出てくれるかも。


 焦る気持ちをなんとか抑え込み、拳を握りしめる。

 最寄り駅に着くとすぐさま電話をかけた。

 発信音が続く。


 出ないのは、今まで通りの理由か? それとも出れないのか?


 電話を切って走る。


 病院に着くと、頭上の案内板に目を走らせながら、早足で東病棟へ急ぐ。エレベーターなんて待っていられない。階段を駆け上がる。


「305、305」


 あった!


 部屋の入口脇のネームプレートを確認すると、千夏の名前になっている。


 間違いない。本当に入院したんだ。一体何の病気で?


 ノックすると、意外に元気そうな声が聞こえてきてほっとする。

 扉を開け中に入ると、千夏がこちらに背を向けてベットに座っていた。


「起きてて大丈夫なのか!?」

「修ちゃん?」


 柔らかい優しい声につられて側へ行こうとしたら。


「ちょっと待って!」


 顔だけこちらに向けて、小さく制止する。


 そうか。まずは謝らないとな。


「千夏。今までごめん。仕事にかまけてお前の話をちゃんと聞いてなかったことに、やっと気づいたんだ。これからは改めるから、帰ってきてほしい」

「……」

「病気は、大丈夫なのか?」

「うん。それは大丈夫っていうか……。修ちゃん、私も謝らなきゃいけないことがあるの……怒らないでね」


 そう言って立ち上がった千夏を見て、俺は目を疑った。


 ええ!? どういう事だ!?

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