第39話 強襲。ギルド パイオニア 最強パーティー 下

 光の球は、赤紫の球の渦の真ん中で、小さな光の球が弾けたように広がり、赤紫の球を吸収しようとするが…、赤紫の球の渦は、弾けた光の小さな球を反対に吸収すると天井へとかけあがり、天井に沿って移動を始めた。


 球の集まった長細く蛇行をしているモノが、アサトの頭上にくると、揺らめきながらアサトの背後に落ちてきて、人の型に作られはじめる、その形がクレアシアンになると背後から優しくアサトを抱きかかえた。


 「おねぇさんの魅力に…いやらしいこと…考えたでしょうぉ…、いいのよぉ。おねぇさんわぁ…。いやらしいぃこと…すきだからぁ…」と言葉にすると、アサトはクレアシアンのなまめかわしい声に頬を赤らめた、すると、ものすごい勢いでアルベルトが短剣を突きだして突っ込んでくる。

 「はなれろ!」と…、その行動にクレアシアンはアサトから腕を放し、前にアサトを小さく押した。

 アサトは前のめりで倒れると、そのすぐそばをアルベルトが通り過ぎ、手にしている短剣が女に突き刺さる瞬間。


 赤紫の球体に変化して散開すると、再び渦を巻きながらナガミチへとむかい、ナガミチを包み込むように渦が覆うと、クレアシアンとなって、背後から腕を絡めて優しくナガミチを抱きかかえた。


 「…わたしのいとおしいひとぉ…、たのしかったわ…そろそろ眠りなさい…」といい。

 腕を放すと空中に浮いた。


 激しい風が、彼女の足元から渦を伴って上に上る、黒みがかった髪が上にあがり瞳が真っ赤に染まると、ゆっくり、右の腕を上げ始めた。

 そして、水平に腕をあげると、人差し指と中指だけをしなやかにあげて、水平になったところで、ちいさく不規則にさげるとしっとりとした口調で呪文を唱える。


 「闇と光の神に仕えし、ドラゴニアの神よ…」とその時


 「あっ、」と、テレニアが、声を出して呪文を唱え始めた

 「光とエルフの神よ、そして…この指輪に宿いし、精霊の力よ…」


 「私に力を…」とクレアシアン。


 「私に力を…」と続けてテレニア


 「エル・ドラグア…」


 「皆に5層の防御を…」と言うと、光が幾重にもその場にいる者にまとわる。


 「伏せろ!!」とアイゼン…、その声に全員が床に飛び出し伏せた。

 「ドラゴンの羽ばたき!」と女が呪文を唱えると、女の指先に直径15センチの闇色の球が現れると、いびつに膨張したのち急激に縮小して…。





 夜の静寂が覆っている街に一瞬の閃光が走ると、…巨大な爆発音がデルヘルムの街全体を揺るがした。





 2階が吹き飛んだ………。

 ナガミチの家の2階だけではない、隣の家、向かいの家。

 その裏の家…と、半径100m程にある家の2階以上が、一瞬にして吹き飛んだ。

 吹き飛んだ家々の残骸が、その吹き飛んだ家の何倍も遠くに飛び散る。

 爆煙と埃が、ナガミチの家を中心に舞い上がり、粉塵が視界を失うほどに立ち込めた。


 その爆風が作り出したガラクタに混じって、全員が四方八方に飛ばされた…。

 「うぅっ…」「くっ…」「ン…」と…みな爆風に飛ばされている間、踏ん張っていた。


 飛び散っていた破片らが降り注ぎ、砂塵を伴った煙だけが、再び静まり返ったデルヘルムの街に漂った…。

 そして…。思い出したかのようにあたりから犬や獣が吠え始めた…。


 上空から、その光景を見ているクレアシアンが微笑む

 「まぁ…こんなところかしら…。楽しかったわぁ、わたしのいとおしいひとぉ…。ナガミチ…そして…ぼうやも…可愛かったわぁ…また…会いましょう…」と下腹を優しくさすりながら言葉にした。

 ほどなくして足元からもやが現れると、そのもやの中にゆっくりと姿を消した…。


 崩れかけたナガミチの家。


 一階で頭を抱えて横になっているポドリアン。

 起き上がると埃に咳き込みながら頭を抱えて上を見る、そして、移動。

 二階に続く階段を上ると愕然とした。

 そこには天を覆いつくす程の星空が広がっていて、あたりはその高さから、たくさんの誇りと砂煙が一面を覆いつくして見えていた。


 「…こりゃ…大変だぁ…」と、言葉にすると一階に降り、家を出て通りに出る、周りの家からも人が出てきていた。

 と、埃のむこうから人影が走ってくる。チャ子だ!

 チャ子は寝間着のままで、半べそをかきながらポドリアンにぶつかる。

 「ポッド、かあさんわ?かあさんわ?」と声にする…。

 「チャ子よく聞け、おまえのかあさんも、アイゼンさんも、ナガミチさんも…みんな生きている。おまえの鼻で見つけてこい。気を付けてな。」と言うと、大きく頷き、

 「かあさ~ん」と叫びながら、舞い上がった砂塵が、降り注ぎ始めた街へ駆けだした。


 アサトが目を覚ますと、腕組みをして立っているアルベルトが、ジッと黒鉄くろがね山脈を見つめていた。

 「あ…アル…さん…」と声をかけると

 冷ややかな目でアサトを見降ろした。

 「…気が付いたか…大丈夫なら、いつまでそうしている。クソガキ。みんなを探すぞ」と言いながら歩き出した。

 その言葉に促され、上半身を起こすと頭がぼーっとしていた。

 離れたところから声が聞こえ、周りの家からも人が出て来た、犬や獣の鳴き声も聞こえてきている。

 息を吐き、立ち上がるとふらふらしながらアルベルトに追いつく。

 「だいぶ飛ばされたな…あの…。イラつかせやがって…」とつぶやきながらアルベルトは歩き続けた。アサトは、まだ、ぼーっとしていた。


 インシュアは、テレニアを抱き上げると周りを見渡して、自分がどこまで飛ばされたのかを確認していると、テレニアが目をあけた、そして…小さく笑って見せた。


 グリフは、犬小屋に突っ込んでいた、それをチャ子が見つけると、尻を叩いて起こした。


 瓦礫の中でアイゼンは四つん這いになり、その下にはサーシャがいた。

 「大丈夫か」とサーシャに声をかける。

 サーシャは小さく、「ありがとう…」と答えた。

 しばらくすると、その瓦礫をグリフが払いのけアイゼンを助ける、そして、チャ子がサーシャに抱きつき大泣きを始めた。


 アルニアは、どこの家かわからないが、だいぶ離れた家の屋根に立ってあたりを見渡していた…。


 テレニアの機転で、5層の光の防御をまとっていたアサトとギルド、『パイオニア』のメンバーは、大きな負傷もなく無事で、各々の状況を確認したのち、ギルドパイオニアの建物を目指した。


 ナガミチは、クレアシアンが消えて行った空をただ見ていた。


 ギルド、『パイオニア』にメンバーが揃ったのは、そんなに時間が立っていなかった。


 デルヘルムの街は、にわかにざわめき始めた…。

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