第37話 最後の教え 下
…感覚…今、木柱を滑らした時に、その
「『
そして、アサトに構えるように指示すると、アサトは中段の構えをとった。
ナガミチは背後にまわり、アサトの手の上に手を置き、そして、太刀を振り上げると…素早く落とすが、その動きは剣先に重心があるような感覚であり、振り下ろした瞬間に抵抗感のような、重いものを押している?のような感覚を持った。
剣先の遅れ…、なぜか…、…投げた?と言う感覚が体を走った…、その感覚にゾクゾクして思わず。
「あっ」と声を上げた…。その言葉にナガミチは口角を上げる。
「わかったか…、この剣技は、俺のオリジナル。伝授しているのは、そこにいる、アルとインシュアだけだ、今、この剣技しかできていないが、この太刀を思うように扱える事が出来るようになれば、剣技の幅が広がり、お前もオリジナルの剣技を見出す事が出来る。」
と言うと、チャ子を見る。
「チャ子、アイゼンを呼んできてくれ…」と言うと、チャ子は頷き、中庭から部屋を通って外へと駆け出して行った。
「…この太刀は…」ナガミチは続ける。
「…今、この世界…いや、昔もそうだが、最強の武器だと言われている物だ。切れ味や操作性。刺すに特化し、斬るに繊細さを持つ、美しく、また、強靭な武器だ。これを使い極める事が出来れば、お前は強くなれる。だが、武器だけに頼るな、この武器に相応しい心と力を持つんだ。」と言い。まっすぐにアサトを見た。そして、
「お前の職業は、剣士『サムライ』。この世界にある職業の中で、唯一、一子相伝の職業だ。俺とお前は、同じ種族で、同じ民族。この民族が使用していたのが、この武器。刀、そして、この太刀だ。俺は、俺と同じ民族の来訪を10年待った。そして、お前が現れた。お前には悪い事をしたが、お前にこの職業を伝授するしかなかった。スマン。」と頭を下げた。
アサトは、無精髭のナガミチの頭部を見る。
うっすらと生えた白髪が目立っていた。深々と下げた頭に言葉が出てこない。
「おまえは…、…お前には苦労を掛けるかもしれない…」と言いながら、頭を上げる。
「俺もこの年だ、と言ってもまだ若いと言う者もいる。だが、人の命はわからない。だから、俺にもしもの時があったら、『
「…これが、俺の今できるレクチャーの終了の言葉だ、ここにいていい。ここで修行をして、わからない事があれば、俺でも、アルやインシュアにでも聞け。修行は怠るな。狩りもして経験を積め、経験は、金で買えない貴重な財産だ。」と言いながら、アサトに背中を見せると上着を脱ぐ。
その背中には、大きく右の肩から左腰のあたりまで斜めに引っかかれたような傷が現れた。
その傷は生々しく、黄色の肌に、赤みがかった肉の乾いた赤が、肩口の大きな傷口から腰にかけて小さくなっている傷で、かなり深い傷であった。
「それは…」と言葉にだすと。
「…これは、俺の思いと目的の結末。そして、
「この傷は、神の癒しの魔法は通じない。…俺にこんな傷をつけた化け物が、この世界。この星には、まだまだいる。…俺の道をたどらなくてもいい。お前の道を探すんだ、お前にはまだたくさん時間がある。お前は何歳なんだ?」
「…16歳…だったと思います。」と言うと、小さく笑う
「アサト…、お前は若い、これから何をしても、迷い悩む事も多いだろう。喜びや悲しみを経験するだろう。…その経験を踏み越えて、大きくなれ…、…すまん、これは俺の願いだった」といい。少し照れたような表情を浮べると。
「…とにかく、お前らしく…生きるんだ。」と言うと、中庭を後にしようとした。
「アル。インシュア…。アイゼンが来る。後は頼む。」と言い残し、家の中に入った。
壁にもたれていたアルが、壁から離れると家の方に向かう。そして。
「…行くぞ。お偉いさんが、お偉いさん同士で、お偉い話をするようだ。狩りに行くぞ、そこで、お前に血反吐履かせるような修行をしてやる。…楽しみだ…」と言い残して家に入った。
「…、まっ、そう言う事みたいだな。…行くぞ…」といい。インシュアも家の中に入った。
アサトは、ナガミチの言葉を思い浮かべながら…家に入る。
あの言葉は、アサトにも何かを感じさせた、その感じははっきりとは言えないが、ただならぬ事の前触れを感じさせた。そして、あの傷とあの言葉。
『俺の思いと目的の結末。そして、
あれは、…どういう意味だったのだろう…。
その後、アイゼンが一人。チャ子に連れられてきた。そして、ナガミチの部屋に入る。
アサトらは、チャ子を連れて壁外へと、修行兼狩りに出かけた。
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