第19話 幻獣と燭台と謎の男 下
アルベルトは、身長が160センチあるかないかの身長で、目つきが悪く、見た目も、どことなく取っつきにくそうな雰囲気を出していた。
髪形はおかっぱだが、襟は刈り上げてありサラサラの直毛である。
腕組みをして、アイゼンの横でアサトをじっと見ている。
その視線になにか恐ろしい感じがしていた。と言うより、なにか見抜かれるような感じがしていたのかもしれない。
心を読むとかと言う能力でもありそうな雰囲気であった。
「アル、アサトはどうでもいい。お前の話がききたい」って、ナガミチさん…。
「俺は、ここより南のアナベルと言う村の近くで、幻獣が出現したという情報を小人族から聞いた。」
…って小人?と、アサトは首をかしげる。
「その出現現場の調査と、幻獣の監視の任務に就いた。アイゼンの命令でな。そこでわかったのが、『
…やっぱりこの人…。
心を読めるのか?、小人の存在に驚いている事に気付いたのか…。
「
その言葉に、アルベルトが頷きながら話を始める。
「あぁ~、幻獣の出現に関しての書籍で、一度、見た事がある。その燭台が、どう作用するのかは分からないが、その書籍では、燭台を使った吸血鬼が、幻獣を出現させ国を崩壊させたと言う」
「…スイルランドの幻獣か…」とアイゼン
その言葉に頷く。
「…あぁ…、その話は、おとぎ話の話だと思っていたが…」と顎に手を当て、考える素振りを見せてから。
「とにかく、その街の人の話では、目つきの鋭く、色白な男が、3週間前にふらっと現れたそうだ、その男は、布の袋だけしか持っておらず、その布の袋は、肌身離さずにいたようだ」と言うとナガミチを見た。
「色白な男か…」
「あぁ~、それには俺も心当たりがある、そう考えれば、今回の幻獣出現とスイルランドの話は…合点が行くところもあるが、…確証はない。ただ一度だけ、その袋を落とした事があったそうだ。その時に落ちた袋から響き渡るような鐘の音。とはいいがたいが、なんとなく神秘的な音が聞こえ、ちらっと見えた袋の中身は燭台だったそうだ、色も紫みたいであり、緑みたいであり、赤みたいでありと…なんとも不思議な色で、光の当たり具合によって色が変わって見えていたようだ。」
「それが
アルは、頭を振るとサラサラの髪が左右に動く。
「いや、それはよくわからない。ただ面白いのが、男は、日中は陽の光のもとを歩いていたが、ある条件の光だけは避けていたようだ。」
「ある条件と言うのは?」とアイゼン。
「鏡に映った光だと思う。村の人間の話だと、反射している光か…、鏡に反射する光…どちらかはわからないが、とにかく、そのいずれかを嫌っていたようだ。そばに鏡でもあれば、裏返しにしていたとも話していた。その男が、燭台らしきモノを落とした場所を調べてみたら、そこは時計屋の前だった、そこの窓際にあった鏡に光が反射して、男の手にでもあたったんではないかと、俺は推測している。」
「イィ・ドゥか…」とナガミチ。
その言葉にアルは小さくうつむき、なにかを考えている表情を浮べた。
「その
冷ややかな目を、ナガミチにむけて話し始めた。
「男は、その光景を見た村の人に笑ったそうだ。そして、それから間もなく、村の近くで幻獣が出現したそうだ。おれも幻獣が出現した場所を見たが、そこは、面白い事にいきなりそこに幻獣が現れた、という風にしか思えない痕跡しかなかった。そして、
アイゼンが、それを手にして匂いを嗅いでみる。
無臭だ。
確かに紫色の
その
指先は、すべすべとして摩擦抵抗の無い感触があった。
ナガミチも同じような事をしている。
「その後、すぐに小人族のリッチと会い。幻獣の観察に入った。幻獣は、何かに引き寄せられるように進む日もあれば、突然反対側に進む時もあり、また、何日も動かない日もあった。幻獣が進むにつれて、亜人らの神とでも思ったのか、亜人やゴブ、オークなどが同行するようになっていた。ゆく先々に村などがあったから、少数の輩が村を襲うようならば排除しておいた。」
ナガミチが
アイゼンはその
「だが、」とアルが話しを続ける。
「ドラゴンは予想外だった。林の中で顛末を観察していると、輩らが敗走してきたから何匹かは排除していたが、その最中に、あんなのが空から降ってくるとは思わなかった。実際、討伐隊なのか?わからないが、幻獣を倒してしまうんだろう、と言う雰囲気だったから、あの一撃はすべてを変えたのは確かだ。」
「大きさは?」とナガミチ。
「翼を広げたら、20メートルくらいだと思う。おれも正直。面を食らっていたし、このままではまずいと言う雰囲気もあったから、林を抜けて街に戻る道を探した。」
「そうか…」とナガミチ。
アイゼンは、アルの肩に手を置くと、
「とにかく、今日は休め。今後の事もあるし、なぁリッチ。腹も減ったろう?」と言うと、どこからともなく、身長20センチ程の髭を蓄えた男がアルの肩に立った。
「アイゼン、久しぶりだのう。お前に会いたかった。ナガミチも元気そうだし、チャ子も…」と言うと、チャ子がリッチを両手で掴んで頬ずりをした。
どうやら、リッチは、チャ子に追い回されていたようであった。
「離すんだ、チャ子!」とアイゼンが
「とにかく二人ともお疲れ様だったな。今夜はゆっくりと休め。」とねぎらうと、アルはリッチを肩に乗せてどこかに歩いてゆく、と思ったら、いきなり足を止め、振り返りもせずに
「…ナガミチさん…。あとで行くよ。」と一言残し、また足を進めた。
アサトは、リッチの存在が不思議だった。
本当に小人族っているんだ、と遠ざかる二人を見て思っていた。
「ナガミチ…後で話がある。」と言うと、ナガミチは小さく頷く、そして、アイゼンはアサトの肩に手を置くと、少し肩を握ってから放し、倒れている狩猟人へ声をかけ始めた。
チャ子は、
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