第7話 ギルドとこの世界の在り方 下
「まもの…ですか?」とアサト。
「そう、この世界には種族がある。そこにいるポッド…、ポドリアンは人間のような感じだが、ドワーフと言う種族なのだ。それに、サーシャの娘…チャ子は君も気付いているだろう。彼女は豹の亜人と人間の間に生まれた子供、私たちはこのような者を”イィ・ドゥ”と呼んでいる。母親はサーシャではないが、訳あって、サーシャが今は母親なんだ。それに、テレニアとアルニアはエルフと言う種族。エルフとドワーフは種族間では、あまり相性のいいものではないのだが、このように一緒にいる。これは知性があるからだ」とアイゼンが言葉にする。
アサトは、ポドリアンを見てから、テレニアを見てチャ子を見る。
ポドリアンは目を閉じて腕組みをしていた。
チャ子は恥ずかしそうにテレニアに寄り添い、テレニアはチャ子の頭を撫でている。
「このように種族を超えて仲良くできる者たちもいれば、対立を好む種族もいる。この辺ではゴブリン…身長は、120センチから150センチで、肌は緑や深緑、黒ずんだ緑…とにかく緑を主色とした、口の大きく、目玉も大きな種族がいる。その中には、たまに大きな異形種も存在する。この世界には、ゴブリンのような、人間に対して対立をしてくる種族が沢山いるのだ。彼らは我々を狩りの対象としている、主食としたり、奴隷としたり、所持品の強奪の為とか…。また、ここでは話ずらいが、性の対象としたりしている。このような種族間での対立の際は、戦闘行為が発生するのだ。その戦闘は、山や草原、または、洞窟。そして、街…、いついかなる時にあるのかは予測はできない。街を攻められないようにする、その為に国や街の衛兵がいるが、その者達で
納得は、できそうでできない…、今はこの状況を把握する事で精一杯だ。
だが、確かに…。この状況は現実であり、夢などではない。が、この人達は信用していいのであろうか…。
種族や魔物…実際に見ていないから何とも言えないが、確かにポドリアンと言う人は、背は小さいし太い。人間のようだが、これがドワーフと言われれば、ほんとに?と思ってしまう。
テレニアやアルニアに対してもそうだ。耳は確かに人間とは違うし、肌の白さも異常に感じる。テレニアに関してみれば、大きな胸やクビレた腰、
それよりも納得できるのは、チャ子と言う女の子だ。
彼女はやっぱり人間とは違う。
姿、形は人間でも、人間ならあるべきところにあるモノが別の所にあり、また、形も異形である、そして、あってはいけないモノもある…。
そう考えれば、あながちアイゼンの話は、信用してもいいのではないかと思う。いや信用しなければ生きては行けない。
今、手にしている袋の重さから言うと、確かに何か…鉄?のようなモノは入っているようだ、これを元手に生きていく。
技能を身に着けてギルドで働くのが、当面は、それが最善の策なのかもしれない。
だが、もし、このギルドを抜けるとしたら…
アサトは、何かとてつもない不安を感じ、「もし…」と、声に出す。
「?」とその場にいたアイゼンらは、アサトを不思議そうな表情で見る。
「もし…、このギルドを抜けるとしたら…あの…。…あの武器屋の男の人のように…。」とアイゼンを見ながら言うと、アイゼンは肩をすくめながら
「それは君の生きる道。私らが止めることはできない。その時が来たら、先ほど渡した銀貨20枚を返してくれるだけでいい」と言い。
元座っていたソファーへと腰を下ろした。
その言葉を聞いて、アサトはそっと胸を撫でおろした。
ギルドを抜ける、と言うか、別の生き方の選択も出来るんだ、狩猟人である程度稼いだら、あの武器屋の人みたいに店も出せるんだ…と。
その姿をアイゼンはジッと見ている。
ポドリアンがアサトの肩に手を置き、行くぞと言わんばかりに顎をしゃくって見せた。
アサトはその仕草を見ると立ち上がり、アイゼンらに一礼をする。
「その前に…、サーシャ」とアイゼンが言うと、サーシャは頷き、長い机に向かって歩き始めた。
机では、アルニアが紙に羽のペンを使って何かを書いていた。
そのペンを取り上げ、紙を手にするサーシャ。
アルニアは、
サーシャは、紙と羽で出来ているペンをアサトの前に出すと、アイゼンに「すまないが、確認の為にその紙に“こんにちは”と書いてくれるか?」と言葉にした。
アサトは、アイゼンの顔を見てから紙に視線を落とした。
…なぜ?とアサトは思った。
その“こんにちは”と書かなければならない行為は、何のためであるのか、意味があるのか…。
ただ彼の気紛れなら付き合うが、意味のある事なら…。
「確認って、どんな意味があるんですか?」とアサトが口にすると、
アイゼンは、小さく微笑みながら「ただの確認だよ」と言葉にした。
一応羽のペンをにぎる、そのペンは思ったより軽く、また、羽の部分が邪魔にならない。
そのペンを使い、紙に“こんにちは”と平仮名で書くと、その紙をサーシャが手にする、そして、アイゼンへと向けた。アイゼンは小さく微笑み。
「ようこそ、デルヘルムに」と一言、力強く言葉にした。
アサトはポドリアンと共に部屋を出る。
ポドリアンが剣士の職業を勝手に選択し、そのアカデミーへと連れて行こうとしていた。
踊り場に出ると、依頼の配布を待っている狩猟者達が、1階で湧きだっているのがわかった。
下に続く階段へと進む、すると後ろの方からサーシャの声が聞こえた。
「さぁ~時間よ。パーティーのリーダーは、マスターの部屋に集合。依頼の割り振りをするよ」と、その声に下の階が湧き立ち、ぞろぞろと男や女が階段を上がってくる。
その波を2階で待つことにした。
「ポドリアン、アサトを送ったら、あなたはいつもの護衛よ」とサーシャが言うと、ポドリアンは右手を挙げて応じた。
人の波が切れると、アサトとポドリアンは階段を降りて、リーダーを待つ狩猟人がいるフロアーを横目に見ながら、出入り口へと向かった。
アイゼンは、窓の外を見ながら、依頼を受けに来たリーダー達の足音を聞いている。
窓の外には、先ほどの男がアイゼンを見ていた。
サーシャの足音が聞こえる。
「チャ子、アサトを見張るんだ、ナガミチの所にいくと思うから」と言うと、耳をピンと跳ねさせて飛び上がりサーシャを見た。
サーシャは微笑みながら頷く。
すると軽快な歩調で部屋を後にした。
「インシュアにも伝えてくれ、彼らの力になれと…」その言葉に、サーシャは微笑みながら
「命令しなくても行っているから、大丈夫だと思うけど」と答えた。
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