第5話 ギルド ”Pioneer” 下
少し先に行くと、5階建てでレンガ作りの建物の前に着いた。
その建物の入り口に続く数段の階段を登ると、高さ2メートル、幅1.5メートル程の2枚扉があり、その扉には“Guild pioneer”と示されてある、そして、剣が交差し、その交差した剣の上には、満月の模様、交差した下には円。たぶん新月を表した模様が描かれたマーク?が2枚の扉に1つずつ掲げてあった。
髭の小男は扉を開けるなり、大声を発する。「連れて来たぞ」と。
そこは大きな広間となっており、そこに50人はいるだろう、武装している者らが5~6人で、丸テーブルを囲みながら飲食をしていた。
広間の脇には、2階に通じる階段が左右の壁沿いに1つずつ、2個あり、その広間は吹き抜けとなっていて、大きなカウンターも奥にあり、その奥には調理場があるようで、肉の焼ける香ばしい香りが立っていた。
髭の小男の声に、女の子?と思われる者が2階から柵越しにこちらを見た。
「おぉ~チャ子。お前の母さんでもいい。連れてきてくれ。」と声をかけると、コミカルに敬礼のポーズを見せて、2階の奥に姿を消した。
「
「あぁ~多分な。」と、髭の男が言葉を返す。
その言葉に、180センチはあろう、黒髪でオールバックの男が立ち上がり、こちらに歩いてきた。
「インシュアだ、ちょっといい加減な面はあるがいいやつだ」と、髭の小男が言葉にする。
「ドワーフ。お前のみたてなのか?」とインシュアと言う男は、ズボンの前に両方の手を入れて歩いてきた。
その男の瞳は青で、肌は赤みがかった白である。
「ア人じゃないな。お前とは違う。」とドワーフと言われた小男が返す。
インシュアは少年の前に立ち、顔を近づけるとじっくりとアサトの顔を見て、
「ポドリアン。雰囲気が
「あがっておいで。アイゼンが会うそうよ」と、2階の踊り場から女性が声をかけてきた。
その女性の傍らで、さっきの女の子がそうっと見ていた。
「ついて来い」とドワーフのポドリアンが少年を2階へと
2階に上がると女性と女の子がいた。
女性は、長い金色の髪で細い眉に少しきつそうな目元と、髙く細い鼻に小さくふっくらとした唇の顔立ちで、身長も少年よりは少し高く、胸も大きく、腰は引き締まってみえた。
長いスカートは赤で、上にはシルクのような白いシャツを着ていて、黄色と思われる下着がうっすらと透けて見えていた。
腕についている金色のブレスレットが印象に残った。
その傍らの女の子?と言っても、なにか変だ。
髪は金髪と言うか、黄色…ぽい、頭から何かが生えている…三角の…と言うか、耳?みたいなものが生えている。
どうも顔を見ると、瞳が猫のような瞳をしているし、何本か口の上あたりから髭?のような細長い物も生えていた。
その子は女性の後ろに回り込んで、こちらをうかがっている。
その様子に女性が頭を軽くなでると、猫のような表情を浮べながら、女性の背中に顔をこすり付けていた。
「ごめんね、チャ子は人見知りなの」と目じりを下げて微笑む。
その微笑みは、大人の魅力を出している。
少年は、その笑顔に脈が速くなるのを感じていた。
…好きになってしまいそうだ…でも、あの子が子供?さっき、ドワーフのポドリアンが、この子に向かって母さんって言っていたよな…。と言うことは旦那がいるのか…。そうだよな、そうだよな…こんなきれいな人にいないわけないよな。ってか、もしかして旦那は、猫?ってか、猫類?
「こっちよ」と女性が先に立ち、踊り場から奥へと進んだ。
左右にある部屋を2つほど通り過ぎ、突き当りの部屋の扉をノックすると、なかから「どうぞ」と声がする。
その声を聴くと同時に、女性が扉を開けて二人を通す。
部屋には大きな机があり、その机の向こうに、背の高い金髪の男が背をむけて立っていた。
その男は窓から外を眺めていたようだ、その視線の先には、多くの建物があり、多くの人が行き交っている。
その雑踏から逃れ、また、この建物が見える場所に、丈の長い黒色の上着を羽織った男が立っていた。
それを見ながら。
「どうやら…気づいていたな。」とつぶやく、そして瞳を閉じ、小さく息を吐くと
「ようこそ。ギルド パイオニアへ、私はギルドマスターのアイゼン」と、面長で眉が細く、瞳が少しだけ青く感じる清楚な男が、笑顔で言葉にした。
そして、先ほどの髭面の背の低い男をさして、
「君をここまで連れてきてくれた、ドワーフのポドリアン」と、紹介されたポドリアンは、胸に手を当て、右足を少し後ろにずらすと、体を少し前かがみにして挨拶をした。
「そして、この部屋まで連れてきてくれたのが、サーシャ」と言葉にした。
金髪の女性はサーシャと言うようだ、彼女も小さくお辞儀をする。
「そして、サーシャの娘のチャ子」
女の子は、まだサーシャの後ろからこっちをうかがっていた。
アイゼンは、部屋の右側にあるソファーに座っている男も紹介した。
「彼が、グリフ」
その声にグリフは立ち上がり、
「ガハハハハ…、ようこそ、デルヘルムに!!」と握手を求めてきた。
彼は笑い声も豪快だが、体も豪快である。
異常に発達した胸の筋肉、そして、白くなりかけた髭が口の周りにあり、眉も太いのが特徴的で、身長も180センチは優に超えていた。
それよりも雰囲気が2メートル以上に感じるような威圧感があった。
彼が座っていたソファーには、女性が座っていた。
透き通るような銀色の髪に白い肌、そして、とがった耳に瞳は吸い込まれるような
「エルフのテレニア」と、アイゼンが紹介すると同時に、彼女の座っているソファーの後から飛び跳ねるように、これまた銀髪の色白で、目が少しキツイ耳の尖った、今度は男、と言うか少年が出てきてテレニアの横に座った。
「僕は、アルニア。テレニア姉さんの弟。よろしくはしないけど、姉さんにちょっかい出したら殺すからね。」といい、腕組みをするとそっぽを向いた。
その様子を見て、アイゼンが頭を掻きながら
「まっぁ~俺のパーティーは、他にも2人、インシュアとアルベルトってのがいるけど…それは後からでもいいか。」と言い、そのまま、少年に向かって手を差し出す。
「それで、君の名前は?」
その問いに何かが頭の中で弾けた。
音もなく、稲妻のような衝撃が脳内を駆け巡った。
僕の名前…僕は…誰?
僕の名前…僕は…何?
僕の名前…僕は…あ…あ…あ…。
「 “アサト”…です。」
それが本当の名前かはわからないが、確かな事は一つだけある。
それは、そう聞かれたら、そう答えている。
そう答えた。
そして、そう答えていた…と…。
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