第4話 ギルド ”Pioneer” 上
店から出た少年は、先ほど歩いていた道を先へと進むと、少し行った所から大きな道に出た。
その道は、今歩いて来た道より倍の広さがあり、左側の道は緩やかに下っていて、右側への道は緩やかに登りになり、少し行くと広場みたいな感じになっているようであった。
ココにも多くの店が出てはいたが、3・4階建ての建物が多く、大通りみたいな雰囲気がしていた。
思うに、今来たのは路地裏で、この道がメインストリートのようだと思った。
とりあえず、広場がありそうな右側に伸びる道へと進んでみると、髭の男が言っていた事は夢では無いと確かに感じた。
風も音も、この雰囲気も…、そして、四肢を使う感じ、すべての感覚が現実である。
これからは、ここで生きなければならない、と言うか、生きる。
生きていかなきゃならない。
その為に、まずは生きる為の道を見つけなければならない。
街は、賑わいを見せ始めている、道行く人にも狩猟者であろう、剣や鎧。兜を携えた者や三角の尖がり帽子を被っている者。長いローブを羽織っている者や動きやすそうな軽装でも、腰に短剣を
狩猟者の中でもこちらを見ている者もいる、また、建物の間の隙間に横になっている者も見受けられるようになってきた。
自分が選ぶのは、狩猟者なのか…それとも…。
目をやった先には、飲食がとれる店があり、そこで、忙しく食べ物や飲み物を運ぶ男性や女性の姿が見えた、また、近くの店では野菜であろうか、緑色の葉の食べ物らしきものや赤い食べ物、黄色い果実のようなものを並べている店も目に入ってきた、その隣では、肉屋であろうか、生の肉を店一杯に広げ、ねじり鉢巻きで客寄せをしている男も目に入ってきた。
近くには、魚屋であろう、底の浅い桶から魚が飛び跳ねているのがわかり、他にも店先に魚を並べ、奥の方では魚を天日に干している。
雇ってもらうにしても、その仕事に見合った技量は持たなくてはならないと思った。
また、道沿いには、同じような店が並んでいる。
競合する店もありそうだ、と言う事は、日当銅貨が多くて30枚から少なくとも10枚って言うのは、本当なのかもしれない…と言うか、その価値はどうなんだろう。と少年は思った。
物価もわからない、基準自体がわからない状況での評価はどうなのだろうと思っていた。
だが、基準や評価は先回しで、生きる為に先立つものを得なきゃ始まらない事は確かである。
髭の男が言うには、まずはギルド。
…ギルドってなんだ?…、そもそも、ギルド自体がわからない…。
その場で立ち止まって考えてみるが、やっぱりわからない。
とりあえず、話を聞いて情報を得よう。
たくさんの疑問はあるが、情報を収集してから先の事は考えようと言い聞かせ、止めた足を動かした。
広場には何かあるかも知れない、あるはずだと願いながら進んだ。
すれ違う狩猟人たちが多くなり、その人たちは、複数人で行動しているようだ、薄っすらと、これが”パーティー”なのかな?と思った。
ようは仲間で狩りをすると言う事だな…と、曖昧だがそう思った。
そんな行き交う人の話は、クエストがどうの、森がどうの、熊?がどうのって会話をしている。
そのなかには女性の姿も見えた。
男女関わらず、脇に剣を
大きな
真っ白なローブに木製の杖を持った女性とか、身軽な恰好でありながら何本もの短めの剣を腰に
いろいろな武器や装備をしている、見ればすぐにわかるような恰好の狩猟者が多く目についた。
…狩猟者って言う者は、何を狩るのだろう…素朴な疑問を感じた。
髭の男は供給面と言っていたが、製品の作成の為に、鉱石や木材の採取ならあのような装備は必要ないのではないか、なら、食材、主に肉を狩るのなら…魔法使いや剣士。神官まで必要なのであろうか…。
この世界にはあのような装備をしなきゃ、狩る事の出来ない獣でもいるのではないか…。と思っていると、自分の姿がこの世界の服装で無い事に気づく。
上はジャージ?下はスエット?だった。
朱いジャージは目につく。
すれ違う人、また通りにいる人たちの視線を感じながら、少年は広場を目指して進んだ。
登り坂をのぼり終わると、そこは円形の広場になっていて、中央には大きな噴水があった。
あたりを見渡すと、この広場から何本かの道がでていた。
先ほど、通ってきた道の広さの道が一本、広場から出ている、その先には、同じような広場があるようだ。
この広場で一番目を引くのが、レンガ造りの5階建ての建物だった。
そこから、装備を整えたグループがどんどん出てくる、それと入れ替わりで入って行くグループも多かった。
…あそこがギルドなのだろうか…
ちょっと様子をみてみようと思い、その場で
もし、あそこがギルドという建物なら、なんか目印みたいなものがあるのか?とふと思った。
ただ、ギルドを目指すと思って進んではいたが、大事な事を聞くのを忘れてしまっていた。
人に話しかけるのはどうも苦手なようだ。
少しあたりを見ながら話しかけやすそうな、見るからに親切そうな人を探す。
周りは、髭の男が言っていたパーティー…ようは仲間の集まりみたいな集団が目につく。
一人でいるような雰囲気の者は見当たらず、誰かと必ず一緒にいる。
なんか、疎外感を覚えていた。
すると、
「おまえ!
少年は、恐る恐る振り返る。
「うぅん。やっぱりな。久しいのう。
「え?」と少年。
「ギルド行くんだろう?。と言うか、お前は雰囲気が、あれだ、あれ…」と顎鬚をなでながら考え
「まっ、いい。とにかくついて来い。」と、顎を先に振った。
少年はその姿に、話しかけるより良かったと胸を撫でおろす。
小さい髭の男は広場を抜け、大きな通りを通って、先ほど見ていた広場に辿り着いた。
その広場には噴水は無いが、5階立てのレンガ作りの建物が囲んでいる広場だった。
その広場からも何本か道が出ていたが、やはり、先ほどのような広さの道は一本だけであり、その先にも広場のような広い空間が見えていた。
「この広場に俺の所属しているギルドがある。
「うぅ~ん。やっぱり、あれだな、あれ…」と、付け加えた。
『やっぱり、あれだな、あれ…』って…なんなんだろう。
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