第8話

皆さんは路線バスの防犯設備についてご存知だろうか。会社にもよるが、俺が所属している会社のバスに関していえば異世界使用、日本仕様共通でまずはドライブレコーダーを設置しており、車内も映るように設置している。どのように設置しているかは教えられないが、車内の隅に防犯カメラ作動中とか車両の「乗降中」の表示機の近くに「ドライブレコーダー作動中」といったステッカーを張っている。これは近年酔っ払いなどが乗務員に暴力をふるったりまたは痴漢の証拠、またはあおり運転対策なども兼ねている。先輩運転手曰く、最近は全く見ないが昔は深夜便とか早朝便とかで追い越しもできない狭い道で煽るバカがいたそうだ。あとは「緊急ボタン」だ。これを押すと車両のスーパーサイン(行き先とか表示しているあれ)に「非常事態発生中!警察で通報して下さい。」とか「SOS」とか表示され営業所に異常事態を自動的に連絡してくれるものだ。主にバスジャック対策のものだ。

じつはこれ、ボタンの場所の都合で結構誤操作してしまう人も多いのだ。しかも本人は車内の警報音も何も表示も音もないので気が付かないものである。対向車から指摘されたり無線で連絡でやっと気づくものである。バス会社に入り消え去るまでに押さざる得なくなる者はほぼいない。こう言っても過言ではないのである。


「おい!!お前!!金出せ!!」

Twitter風にいうならバス強盗なうである。刃渡り15センチ以上はあるであろう包丁らしきものを10歳前後だろうか。少年が運転席にいる俺に向けている。なお外国のバスみたく運転席との仕切りががっつり防護板であるわけではない。

今ここで通報ボタンを押して営業所から衛兵に通報してもらえるだろうが、正直今晩の夕飯がまずくなる。どうする?どうすれば俺はこの子を・・・?

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