第2話 魔法少女のマスコット
これはいかなる状況か?
クリスマス・イブの深夜、私は娘の部屋のドアをこっそり開けて中の様子を
別に不審者という訳では無い。
今の私は、赤い帽子に赤い服。
白い付け髭を蓄えた立派なサンタクロースだ。
娘のベッドの中はふくらんでいる。
よしよし。もう寝ているのかな?と安心して、更に扉の隙間を広げ・・・ようとした時に、部屋の中で話し声がしているのに気が付いた。
見ると、ベッドの中にいるはずの娘がちょこんと部屋の床に座っていて、目の前には白い毛玉が浮かんでいた。
毛玉?
いや、何かあれはもっと禍々しいもの。
娘が大好きなアニメ、魔法少女とかに出てくるアイツだ!
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
いかんリンちゃん、その契約はしちゃダメなやつだ!
ちなみに、リンちゃんとは私の娘の名前だ。
娘の大好きな、魔法少女のアニメなどを一緒に見ているから知っている。
魔法少女とは、見て楽しむもの。
自分がなってしまうと、色々大変なんだぞ?
マミられちゃったお友達もいるしな!
慌てるあまり、扉を開けて部屋の中に入ってしまった。
娘と、毛玉が驚いた顔をしてこちらを見つめている。
いやぁ、毛玉にも顔があるんだなぁと場違いな事を考えている私の耳に、娘の驚いた声が響いてくる。
「おとう・・・さん?」
いやちがうぞ?わたしはおとうさんなんてなまえではない。
サンタクロースという立派な名前があるんだからな?
だが、凍りついた私の頭の中では言葉にならない言葉がぐるぐる回るだけで、何一つ声を出す事ができなかった。
ただただ、首を否定を表すように横に振る事が出来るだけで。
その私の願いもむなしく、娘は白けた目を向けて冷たい声を放った。
「おとうさん、なんでそんな格好しているの?」
終わった。
目を輝かせて、サンタさんにどんなお願いしようかなぁ、などと無邪気に話していた我が娘はもういない。
大人への階段を登ってしまったのだ。
がっくりとうなだれる私にかまわず、毛玉と娘は会話を再開した。
正体がバレたサンタクロースに世間の目は冷たい。
キミ、泣いてくれてもいいんですよ?
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