Act.07 脱出準備、ほぼ完了
あの忌まわしきライオンを倒し早一週間と少しほどか。あの後俺は順調にここ「
思えばずっと昔のことのようにも思えてきたな。ここまでサクサク進んだのもあのスキルのおかげといったところか。
あの後俺は祭壇に戻り、上層に向かう準備をしていた。そこで俺は今後使えるかもしれない魔法や魔術を今まで吸収してきた中から延々漁っていたのだ。そこで見つけたのがこの「マッピング」スキル、
おそらく最初のほうに吸収したゴブリンのうちのどれかが習得していたのだろう。ゴブリンに持たせておくのはとてつもなく惜しいスキルだと後々分かった時には、あの時そのゴブリンを倒した自分を褒めたいほどだった。
能力としてはかなり単純。自分が踏破したルートを紙に自動的に写してくれるものだった。それだけだとあまり聞こえはよくないが、俺はとある紙を持っていたおかげで、このスキルの価値を見出せたのだ。
それが、デカゴブリンの持っていたあの紙だ。あの時は業炎魔術で始末したはずだったのに、なぜかこの紙だけは燃えずに残っていたのだ。あの時はただの不燃性のある紙なのかと思っていたが、後々鑑定してその効果にたまげたものだった。伸縮自在、書かれたものを擬似データ化可能というチートアイテムだったのだ。
他にもいろんなスキルが運用には必要だったが、それに見合うほどの結果をもたらしてくれた。
お陰でかなりスキルレベルも上がったし、雑魚を相手する時間も省けた。
今は来るボス戦に向けてスキルの練習もかねて十層で狩りを楽しんでいる。
マッピングスキルで分かったのが、このダンジョンは空中に浮いているらしいことが分かった。最初その結果を見た時には愕然としたね。そりゃ上にしか行けないわけだと。
そんでもってこのダンジョンは十二層構造。十二層構造といっても、実際に重なっているのは十層までで、上二層は何らかの魔術によって通路一本で支えられている。
十一層は単独の層ではなく、それだけで一層分ある大きさの円柱が四つ四角状に配置されている。そしてその上の十二層。ダンジョンの終点だな。圧倒的ラスボス感漂う一層構造で、十一層のすべてから通路がつながっている。おそらくどれか一つの層を突破出来たら上には上がれるのだろう。
『ぬ』
索敵スキルに反応アリ。即座に気配遮断と隠蔽、魔力遮断を発動させる。
魔力遮断スキルも上がってくる途中で手に入れ、練習をしたスキルの一つだ。初めのほうからお世話になっている索敵スキルも常時発動可能になり、利便性がかなり向上した。
静かに反応があった方向へと移動していく。
反応はこの角を左に曲がった先から発せられている。ちらっと角から敵の姿を確認する。
デカい。十層の敵は大体手ごわいが、コイツは別格だろう。
俺の予想していた層が上がるごとに敵の強さが上がるというやつ、ほぼ当たりだったが一つだけ間違っている所があった。それは、どの層にも一定数雑魚が居たのだ。だが、そこに生息するモンスターどもが自分の縄張りを広げようとするため、相対的に雑魚は淘汰されていったということだ。
結果的には何ら変わりはないのだが、基準が変わらないだけで結構ありがたかった。雑魚の少なさでその層に対する警戒度を変えられたし、比較的安全な層もわかったからだった。
だがやはり層が上がると魔結晶の質ががらりと変わった。祭壇の層では平均して2しかもらえなかったが、ここではどんな雑魚でも10は下らない。まあその分油断はできなかったんだけれども。
ちなみに今のステータスはこんな感じになっている。
名称:未登録 装備者:未登録 装具ランク:Ⅴ
種族:エンシェント・ア―ティック
攻撃力:0 魔力値:4998/5000 耐久値:1500/1500
魔結晶値:3420/5050 スキル促進値:105
付与効果
魔力効率化Ⅹ 装備者全ステータス上昇大
付与スキル
業焔魔術:Lv.10
自己スキル
鑑定:Lv.8 晴嵐魔術:Lv.10 召喚魔法:Lv.10 地凱魔法:Lv.7 蒼犀魔術:Lv.7 金魔術:Lv.9 木蘭魔法:Lv.6
…
相変わらずの攻撃力ゼロ。だが魔術、魔法スキル関連の伸びはかなりいい。初期から活躍していた業焔、晴嵐魔術はかなり前にレベルマックスに。召喚魔法も使い勝手がよく、よく偵察やマッピングに利用していて気づいたらレベルがマックスになっていた。
正直スキル表記にも出ているように、攻撃系魔術以外のものはなんせ数が多すぎて全部表示しようとすると終わりが見えなくなるほどになってしまった。
だが、能力向上系のスキルは使い方がいまいちよくわからないものも多いものの、非常に便利なものもある。例えば同時演算。思考の分割も魔術の同時使用もお手の物という超便利な代物だ。八層のボスから手に入れたが、手に入れてからの戦闘が非常に楽になった。
そう。そんで金魔術。体が金属でできている俺にとっては攻防一体の魔術だ。常時発動させていれば、質量保存の法則内ではどんな無茶でもこなすことができる。ここまで俺と相性のいい魔術もそうないだろう。
ようやく敵に動きアリ。こちらに向かってきてる。
この地響きももう慣れたものだ。祭壇の層のライオンが可愛く思えてくるほどには。
ここの生物はどいつもこいつも形容しがたい見た目をしている。時々哺乳類のようなルックスをしている奴もいるが、基本はナウ○カに出てくるような奴らが多い。それを踏まえてこの魔獣を形容するならば、まだ哺乳類寄りといえるだろう。
四足歩行、鹿とキリンを足して二で割ったような見た目。毛らしきものも硬く変質しているものがほとんどで、体当たりするだけで大抵の敵を粉砕できそうだ。
魔獣の足が角に差し掛かる。
キュボガンッッ
魔獣の足元で、そこらの家なら一瞬で瓦礫にできるほどの爆発が起こる。犯人は俺。金魔術で自分の体の一部を視認できないほど細くし、通路にトリップワイヤーのように仕掛けておいたのだ。
爆発で左前脚の半分を消し飛ばされた鹿だったが、もう再生が始まっている。
後数分もしたら完全に回復してしまうだろう。勝てないことはないが、戦いが長引くとそれだけ魔力消費量も増えてしまう。ここはさっさとケリを付けたいところだ。まずは初撃。
『業炎魔術、第二章一頁
『晴嵐魔術、第五章二頁
同時演算を活用し、魔術の同時使用による相乗効果で低レベルの魔術でも単体の高位魔術に匹敵する威力を出すことに成功する。炎による継続ダメージとともにカゼィクル・ベイで魔獣の行動を制限することに成功する。
だが鹿も伊達に十層で生きているわけではない。即座に自分の魔術で相殺し、こちらにダメージを与えんと魔術の構築を始める。
ちっ。予想はしていたがここまで早いとは。ちと予定変更だな。
『金魔術、第一章六頁
自らの体を細い細い糸に変化させ、念道で鹿の口元に迫る。
ひぃ。お前ほんとに鹿かよ肉食獣に名前変更しない?と言わんばかりに凶悪な牙が並んでいた。
そのまま鹿の体内にジャンプイン。さて、鹿には地獄を見てもらおうかな。
「キュルオオォオオオォアアァアァッッッ!?」
細い糸を何本にも増やし、体内をぐちゃぐちゃにかき混ぜていく。その巨躯が崩れ落ちたのか、一層巨大な地響きが層全体を揺らす。さて、〆るとするか。
身体をいつもの形に戻し、魔術を構築する。
『晴嵐魔術、第八章九頁
あらゆるものを巻き上げ、天へと運ぶ竜巻。それは例え生物の血肉でも例外ではない。
『ぬぁあ~よき』
魔結晶の吸収はいつやっても気持ちいい。なんだろう......そうだ、あの美味い物を食べ終えた後のような感覚。あれだあれ。
うーむ。魔力も言うほど減ってないな。このまま十一層に行ってもいいかもな。ま、ここの大型魔獣はあらかた狩りつくしちまったからな。最終調整も終了。後はやるだけだ。
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