Act.05 超級魔術
『ぬ......そういえばステータスチェックがまだだったな』
あれだけのゴブリンの魔結晶を吸ったんだ。それなりの変化は期待していいだろう。いざ、尋常に鑑定ッ!
名称:未登録 装備者:未登録 装具ランク:Ⅲ
種族:エンシェント・ア―ティック
攻撃力:0 魔力値:2000/2000 耐久値:500/500
魔結晶値:341/500 スキル促進値:60
付与効果
魔力効率化Ⅸ 装備者全ステータス上昇中
付与スキル
業焔魔術:Lv.5
自己スキル
鑑定:Lv.8 晴嵐魔術:Lv.5 土魔法:Lv.4 気配遮断:Lv.6 隠蔽:Lv.7 気配感知:Lv.5 索敵:Lv.4
さて問題のスキル促進値。詳しく見てみる。
スキル促進値・・・自己、付与スキル問わずスキル習熟度を上昇させることが出来る。
ふぁっ。つまるところこれがあればスキルの練習をせずともレベルが上がるということなのか。よし使おう。なんなら今全部使っちまおう。......と言いたいところだけれども正直使い方がわからない。
......あ、なるほど。ほうほう。要は対象を指定して使う分を口に出して言えばいいわけだ。
『業炎魔術にスキル促進値を15使用』
ナレーターさんに言われたとおりにやってみる。お、上がった。......ん?ちょっと待てこれレベルタスカンしてないか?
魔術のレベルがポイント使う前は5。んで使った後が10。詳しくはわからないが、およそレベルを一つ上げるために必要なポイント数が3。
これもしやかなり重要なものなのでは......?いや待て。結構危険な戦闘をせずに手軽にレベルを上げられるわけだ。これくらいの代償は必要なのかもしれない......と思いたい。
だがしかしレベルが上がったんだ。どうしても新しく使えるようになった魔法を試してみたい気分に駆られるのも仕方のないことであろう。
というわけでやってきました祭壇の層中心部。そして相対するはこの層きっての実力者!!ジャイアント・コボルトさんにございます。
いやぁなかなかの業物をお持ちですね。刃の長さが一メートルはあろうかという巨大な両手斧をその背に担いでいます。おぉっとこちらが見つかってしまったようです!!つい先日ダーク・コボルトさんの群れを壊滅させてしまったのでこちらの顔を覚えていらっしゃったのでしょう。容赦のない上段振りが襲い掛かってきます。
だがそこを軽快に後ろ移動で躱していく!!コボルトは石畳にめり込んだ巨大な斧を横薙ぎに振り回し、追撃を試みようとします。ですがその攻撃は虚しくも苔の生えた石積みの壁に当たり、派手な金属音と共に石礫を周囲にまき散らします!
さぁここでやってまいりますは最近覚えたという超級魔術!どんな素晴らしい
という脳内実況をよそに、俺は覚えたてほやほやの魔術を構築し始める。
『業炎魔術、第十章一頁
グワッバンッッッ!!!
『いっぎゃぁあぁああぁぁ!?』
派手な音と閃光と熱量が俺を襲う。何が起きたか?正直わからんっ!熱い!!目ぇ痛い!!何も聞こえんッ!!現場からは以上ッ!!!
ギャリィイィィィイン!!
痛っ!?ちくしょう、野郎俺に攻撃当てて来よった。視界がまだ回復しないのがかなり痛い。逃げることも反撃することも出来ない。
ギンッ、ギャィイン!
あぁもう、痛てぇ痛てぇって!
『だぁあ、豪炎魔術、第四章八頁
スフィアは術者の周りを火の球で覆う魔術だ。威力もないし攻撃もできないとあって使う機会はないと踏んでいたんだが。取り敢えず今はこの術を維持して、視界と聴覚が戻るのを待つしかない。
火球の上からコボルトが攻撃しているのか、時々金属と金属がぶつかり合う音がかすかに聞こえてくる。いい兆候だ。
だがウザい。気持ち火球の威力を上げ、コボルトを怯ませようとする。作戦が功を奏したのか、金属音のする回数が目に見えて減った。
......よし。視界良好、音もそこそこ聞こえる。今まで俺を覆っていた火の壁を消し、急いで次の魔術を構築。
『オラっ!』
コボルトに放ったのは最初の方にある章の魔術だが、信頼性の高い攻撃魔術。
「ギャルオッ!!」
一瞬怯んだところに、先程よりも威力を上げた同じ魔術を急所に放つ。放った魔術は俺の思い描いた通りの場所に飛んでくれ、コボルトを死に至らしめるに足る傷を負わせられたようだった。
コボルトは操り人形の糸が切れたように膝から地面に崩れ落ちる。魔結晶だけ抜き取って、今回は祭壇に戻ることにした。
*
で、結局あの魔術の不発はいったい何だったのだろうか。暴発ととらえればそうだし構築が上手くいかずに注がれた魔力が行き場をなくして爆発......まあつまりは魔術の暴走といったとこだろう。
じゃああれを魔術の暴発としてみるなら、暴発する条件を探らないと今後あんなことがあったら待っているのはおそらく死だろう。
魔力の注ぎ過ぎ。そう考えるとイメージしやすいのは魔術をコップ、魔力を水と考えた場合か。適量流し込まないと魔術はきちんと発動しない。そんなところか。
レベル的には何ら問題はないはずだ。とすれば魔術のレベル=その分完璧に扱える、というわけではないのだろう。あくまで高レベルの魔術が使えるようになっただけであって、それを実戦で使えるかと聞かれたらノーなのだろう。
『とまぁまとめてはみたが、結局は実戦あるのみなのか......』
現実はそう甘くはありませんでしたってか。結局異世界だろうが地球だろうが根底は一緒なのかね。
今日は早いけど明日はやりたいことがあるし、それに向けて備えるとするか。
*
薄暗く湿った地下道に、通路の奥から響いてくる歓談の声が反響する。
その音に誘われてやってくれば、君も晴れて
ここでは奴隷闘剣士に人権などはなく、所有者に命令されれば「イエス」と答えるほか道はない。
命を懸けて勝ち取った賞金ですら、奴隷剣闘士のもとには一銭たりともやってこない。だが、時間とは残酷にも過ぎるものであって、時間が経てばまた次の戦いがやってくる。
そんな生きる意味すらあやふやな中必死に戦い、貴族や上流階級の人間に血を見せるのが奴隷闘剣士という職業である。
「さァ西門から出てくるは忌まわしき人と獣の間に生まれし種族、
やけに耳にこびりつくテンションの高い実況が会場に今宵の
こちらを檻の中からじっと見つめる敵は鱗に覆われ、こちらよりも二回りほどは大きい。二足歩行故に進化した後ろ足と、相対的に退化した前足。
頭はどこかに繰り返しぶつけたからだろうか。硬そうな丸いこぶが頭に乗っかっている。
見た目こそ滑稽だが、その攻撃力はこちらを一撃で粉砕できるほどの威力を秘めている。用心して戦わなければ、後々血の海に転がっているのはこちらになるだろう。
「それでは両者ともに準備が整ったようです......それでは始めッッッ!!!」
さて、今日の晩御飯はいったい何だったっけな。
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