Act.04 オニごっこ
無事にライオンから逃げ延びた俺は、最初に目を覚ましたところーー祭壇とでも呼ぼうかーーに戻り、(寝れるのが意外だったが)睡眠をとった。
ナレーターさん曰く寝なくても大丈夫なのだそうだが、あの時はどうしても体が何となくだるかった。
正直あんな戦いはもうごめん......と言いたいところだけども、ここが異世界なのであれば今後もあんな戦いをしていかなくてはならないだろう。そこら辺ちゃんと心構えをしないと後々困りそうだ。
で、ゲーム脳的に考えるのならば戦闘が終わったんだから経験値的なものが入っていないとも限らない。とゆーわけで、鑑定。
名称:未登録 装備者:未登録 装具ランク:Ⅰ
種族:エンシェント・ア―ティック
攻撃力:0 魔力値:1000/1000 耐久値:250/250
付与効果
魔力効率化Ⅶ 装備者全ステータス上昇中
付与スキル
業焔魔術:Lv.2
自己スキル
鑑定:Lv.7 晴嵐魔術:Lv.2
特に変化はーーあ、いや、あったわ。業炎魔術と晴嵐魔術のレベルが一づつ上がってる。これは嬉しい。
ナレーターさんが補足を入れてくれて、俺が今使えるのはどちらも三章までらしい。三レベルごとに使える章が増えていき、十章ーーつまりはレベルを10まで上げると、秘奥義的な何かが使えるようになるそうだ。ロマンにあふれてるね。
魔術やスキルは基本使えばレベルが上がるそうだ。
『けどなぁ......』
そう、昨日の件である。間違って自分のレベルに見合わない場所に行ってしまったらどうするのだ、という不安。ナレーターさんはリスクはあるがそれに見合うリターンもあるというド正論を突き付けてくる。
うーむ。仕方ない。昨日とは反対方向に進んでみるか。危なくなったらすぐ帰るからな!?
これでもナレーターさんはにっこり。
なんか嵌められた感凄いんだよなぁ......
魔力は十分、やる気は微妙。いざ、探検へ。
*
昨日は上に行ったはずだ。というわけで今日は階段の類は一切使わず行ってみることにしようか。
念道を使い祭壇からふわりと浮く。昨日の戦闘もあってか、幾分動きがなめらかで魔力の消費も抑えられているように思える。
お、今日最初の犠牲し......ゲフンゲフン。もとい、練習相手を見つけられた。えーと、鑑定鑑定......
名前はダーク・コボルト。レベルもそんなに高くはないっぽいな。
呑気に槍持ってお散歩してるだけの無駄飯食らいは粛清せねば。気配遮断と隠蔽を同時発動させ、静かに近寄る。
おぉ。コボルトの真後ろについても全然ばれる気配ないぞ。これは面白い。ばれるまでやってみるか。
五分ほどコボルトの後ろについて回っている。気づいたのが、ここは石造りの空間なのだが稀に植物の生態系が見られることだ。土の上に生えているような種類のものではないのだが、あちらこちらに苔の群生地があった。
もしかするとここは湿った地中にあるのかもしれないな。
「ギョッギゲ?」
「ギギャ?」
げっ。ばれた。あの野郎、通路の角から出てきやがって俺のこと言いよる。ちぇ、面白かったのに。
『晴嵐魔術、第二章三頁
目撃者はすべて消すべし。じっちゃんがそう言ってたぜ。
魔結晶だけさっと抜き取り、そそくさとその場から立ち去る。
その後も順調にゴブリンやコボルト、その他雑魚と括られてしまう可哀想なモンスター'sを狩り、スキルレベルの向上を図っていった。
『ふぅ。疲れたな』
吸収できた魔結晶は大小合わせて大体60個程だろうか。さて、ここまで一度もスキル画面を見たい欲に駆られながらも必死に耐え抜いた俺のダイヤモンドメンタルを褒めたいもんだな。さぁて、どうなってるかな?
名称:未登録 装備者:未登録 装具ランク:Ⅱ
種族:エンシェント・ア―ティック
攻撃力:0 魔力値:1500/1500 耐久値:350/350
魔結晶値:131/250 スキル促進値:30
付与効果
魔力効率化Ⅷ 装備者全ステータス上昇中
付与スキル
業焔魔術:Lv.4
自己スキル
鑑定:Lv.8 晴嵐魔術:Lv.5 土魔法:Lv.3 気配遮断:Lv.4 隠蔽:Lv.6 気配感知:Lv.4
おぉっ、これはなぁかなかなかなかなかなかにぃ~よろしいではありませんか。
途中で手に入れたスキルも含め、全部二回り位レベルが上がってるな。生命線である魔力値も500上がり、意外と脆そうな耐久も100上がっている。
何やらスキル促進値なるものも追加されてるな。詳しく見てみよう。
えぇ~っと?なになに。「スキル促進値:付与スキーー」
『ッ!』
俺の目の前に大振りの斧が振り下ろされる。斧が振り下ろされた方向を見ると、今まで狩ってきたゴブリンの二倍はあろうかというゴブリンが大量の仲間を後ろに連れていた。
おぉん?人のお楽しみタイム中断させる気かぁ?テメェら俺に喧嘩売ってんだな?な?
この際スキル促進値とやらは後回しだ。こいつら全員処してやる。
まずは一番先頭にいるコイツからだ。頭をやれば勝手に他も崩壊するだろ。
と、思ったがこいつらそのことは重々承知しているらしい。一番大柄なやつはすぐに後ろに下げられて、フル装備ゴブリン達が俺に襲い掛かってくる。
『くそったれ、お、ちょ。待ちやがれこの野郎!!』
こいつら、かなり統率が取れてやがる。一列に並んで盾と槍で交互に
『業炎魔術、第四章七頁
前列のゴブリンどもが火だるまになる。よし、今だ。
『晴嵐魔術、第五章二頁
纏めてゴブリンどもの魔結晶を吸収。どうやら魔結晶を壊されても、モンスターは生命活動が停止するらしい。
*
ゴブリンとの戦闘が始まって約一時間。俺はようやくゴブリンの親玉を見つけ、追いかけているところだった。
直前の戦闘でかなり疲労し、魔力も残り2割といったところだろうか。あの野郎、でかい図体して中々すばしっこい上に、どうやらここの地形を完璧に把握しているようだった。一度見つけてもすぐに見失ってしまうし、精神的疲労から魔術の不発も多くなってきている。いい加減仕留めたいところだ。
集中......いた。二つ角を左に曲がった壁裏に張り付いてやがる。
気配遮断と隠蔽を魔力全開で使用。急速にデカゴブリンとの距離を縮めていく。
『ストーン・ウォール』
土魔法でデカゴブリンの隠れている壁ごと密閉。だが、その上面には30センチほどの穴が開いている。何故かって?こうするためなんだよ。
『業炎魔術、第一章五頁
上に空いている穴から威力は弱いが、長時間継続できる魔術を流し込む。
デカゴブリンが聞くに堪えない悲鳴を上げる。
はぁ......やっと終わった......
五分後。そこには白骨と澄んだ緑色の魔結晶と、謎の紙が転がっていた。ありがたく魔結晶はもらっていくが、この紙はどうしようか。まぁ、とりあえず持っていくとするか。
そういえば、脇目も振らずに追いかけてきたが確かここ祭壇がある階層の二つ下のはずなんだよな。時々モンスターを見かけたけど、下手したらさっきのデカゴブリンがラスボスに思えるほどここのモンスター弱いんだよな。
仮にこのダンジョン(仮)が地下にあるとしたら、下に行けば行くほど相対する敵は強くなっていくはず。だけどここではその逆が起きてる。そう考えるとここのダンジョンは塔形式なのかもしれない。
けどそれだと矛盾する点が一つある。今までどの階層にも上にも下にも行ける階段がどこかしらに二つか三つはあったのだが、ここは上に上がる階段しか見当たらなかった。俺が見落としてる可能性ももちろんあるが、仮に塔形式だとして、最下層に入口、もしくは出口がないのはおかしいのではないだろうか。
いったん入ればこのダンジョンを制覇するまでは抜け出せない......と考えれば辻褄が合わなくもないが、そんな鬼畜ダンジョンあってたまるかといった感じである。
とりあえず最下層にいても何も得られないということははっきりしたので、今にもシャットダウンしそうな頭で今日はここいらで帰ろうと決めたのだった。
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