第16話 選択と集中
天神様との二度目の対決もなんとか終了した。
今回の対決で、かすみとの関係もより深まったということで、良かったことにしようと思う。
ラストチャンスの次の対決まで、4年ある。
その4年間をどう過ごすかの計画を立てることにした。
前回までのループでは、引っ越し前の小学校での活動だったため、全く同じ様には過ごせない。
宝珠対策は、ある程度光の蓄積に成功しているため、専念しなくても4年後までには、九つ全て溜められる感触を掴んでいた。
まず始めに、どのスポーツを始めるかについて考えてみた。
やれる種目は、色々あるのだが、前回までの経験を活かす方法にするか、次の対決に向けて新たなことをやるか少し迷った。
経験を活かすとするとソフトボールかバスケットボールの2択となる。
1つ目は、小学4年生から3年間続けたソフトボールを、今回も同じように、地元の少年団に入って続けるという選択肢だ。
強豪というほど強くは無さそうで、前回のように県大会レベルで何度も優勝して、おやじを感動させ泣かせるようなことは出来なさそうに感じた。
あとは、中学から始めたバスケを小学生の時から始める方法。
ちょうど今回の小学校には、ミニバスケットボールのチームがあり、中学は強いらしい。
もし前回と同じように、バスケを中学から始めたとすると、ミニバス上がりのチームメイトに対して、かなりのアドバンテージを与えることになりそうだ。
前回のループでは、中学時の一年生大会にて、ミニバス上がりの生徒がたくさんいる学校にベスト8で負けて悔しい経験をした覚えがあったが、今回は逆の立場だ。
最後は、次の対決のために新たな候補として考えた、剣道を習うという方法だ。
かすみの住んでいる神社の隣には、警察学校があり、その武道場で、剣道を習うことができるらしい。
クラスメイトの何人かは、通っているようだ。
この3つの選択肢から選ぶことにした。
剣道については、竹刀で競技を行うため、真剣を振るという機会はない。
剣道の腕が上がっても、師匠を刀で捉えるイメージは、全く想像出来なかった。
それに、月光の反射による攻撃の方が当たっているので、剣道の腕前は必要なさそうだと判断し、却下することにした。
ソフトボールについても、却下した。
その理由は、前回のループで通った転校先の高校で、同じメンバーで、バスケをやりたい!そう思ったからだ。
となり町の中学には、高校時代に朝練に付き合ってくれていた、ゴッケン・スエッチョ・ケンタの三人がバスケを始める。
その時までに僕のバスケのスキルを、前回以上に上げておきたかった。
ミニバスから始めておけば可能だと考えたからだ。
ということで、スポーツは、ミニバスケットボールを始めることに決めた。
あとは、進めていた携帯ゲームアプリ開発をどうするかだ。
ゲームプログラミングを続けるのは、楽しかった。
オリジナルのゲームを作れるくらいのスキルには、到達していたのだ。
しかし問題があった、高校生までの記憶を持つ僕は、これから流行るゲームをやりこんでいたのだ。
未来で、流行る物を知っているが故、作れば間違いなくヒットする。
でもこれは、ズルだ。
赤の宝珠が爆発を続けることは明白だったため、一端、すべての開発活動を中止することに決めた。
メディアへの露出も断り、普通の小学生に戻ることにした。
止めてしばらくの間は、おやじから、もったいないので、考え直さないかと言われていた。
そんなことをしているうちに、3月も中旬に差し掛かろうとした時、問題が発生した。
それは、3月14日ホワイトデーと呼ばれる日だ。
確かに一か月前に、山のようにチョコレートを頂きました。
チョコレートをくれた相手に、お返しをしなければならないらしい。
おふくろ以外からチョコをもらったことのない僕には、このイベントを乗り切るのは、かなりの高難易度ミッションとなっていた。
どんな物を返せばよいのか、まったく見当がつかなかったため、かすみとれいかに相談した。
正直、面倒くさいので、返さなくてもいいんじゃないかと言ってみたところ、鬼のような形相で、怒られた。
次の日の放課後、近くのデパートの食品売り場に設けられている特設コーナに連行され、買い物カゴが山盛りになるほどのお菓子を購入させられた。
二人は、とても楽しそうだった。
「かーたん、かーたん、これ見て!かわいい!」
「れーちゃん、こっちも良いと思うよ~」
「かなた~、お金は大丈夫なんだよね」
「うん、お父さんにいっぱい貰って来たから大丈夫だと思う」
「かーたん、お金気にしなくていいんだったら、これとかいいんじゃない?」
「れーちゃん、値段見て言ってる? これはいくらなんでも高すぎるよ~」
そんな会話をしながら、売り場をぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる回って商品を選んだ。
しかし、僕には、もう一つの大切なミッションがあった。
それは、この買い物中に、かすみとれいかに渡す分のプレゼントをヒアリングして、それを後でこっそり買いに来るというミッションだ。
さっき回っていた時、かすみが高すぎると言っていた商品をしっかり覚えて家に帰った。
翌日、その商品を二つ、こっそり、買いに行った。
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