第12話 挑戦
「お父さん お願い パソコン貸して 携帯ゲームのプログラミングをやってみようと思うんだ」
「なんか難しそうだな パソコンだけで、出来るのか?」
「ゲームを作る環境は、無料で公開されているみたいなので、パソコンだけあれば、インストールするだけで、いいみたい」
「かなた わかるのか? 父さんその辺りは、全然わからんぞ!」
「図書館で借りる本とかで、自分で頑張ってやってみるから、パソコンを使える時間だけ、確保させて」
小学低学年の息子からの突拍子もないお願いだったが、おやじに、やってみたいという気持ちが通じたみたいで、あっさりOKを貰うことが出来た。
それからは、色々な関連本を読み込み、開発環境をパソコン内に構築して行った。
動作確認用として、おやじの使わなくなったスマホのおさがりも確保した。
スマホは、
本を見ながら、見よう見まねで環境を作っていたのだが、本の情報だけでは、
それを補ったのは、ネットの情報だった。同じような状況で躓いている人が、解消方法をネットにアップしており、同様の症状を検索することで、対処することが出来た。
環境が整ったところで、まず行ったのは、親切なプログラマが公開しているゲームアプリの作り方を紹介しているページの検索だ。
面白そうなゲームプログラムを片っ端から入力し、エミュレータ上で、動作確認をしながら遊んでみることにした。
エミュレータでの動作は、あくまでもプログラムの動作確認用なので、ゲームとしてはカクツキが酷すぎてとても動きが遅く、遊べるようなものではなかった。
動くことが確認できたら、動作確認用のスマホにダウンロードして、遊んでいた。
プログラミングを始めた当初のソースコードは、アルファベットの羅列にしか見えず、呪文のように何が書いてあるかよくわからなかった。
とりあえず最初は、公開されているプログラムファイルをダウンロードし、そのまま動かしてみる。
この作業を繰り返すことで、プログラムの動作確認の手順を覚えることが出来た。
慣れてきたところで、プログラムをダウロードせず、打ち込みにて写す作業を行った。
これは実は、かなり面倒な作業で、プログラムのスペルミスをすることで、すぐにプログラムは動かなくなる。
どこを間違ったのか、お手本のプログラムとにらめっこして、スペルミスを探す。
全てのプログラムを打ち込んで、いきなり動かすとどこが間違っているのか探すのが大変だ。
数1000行の英語の文書の間違いを探す、校閲作業をするようなものだ。
この写本作業のような修行(プログラムの打ち込み)を繰り返した。
打ち込んでは、動かして遊ぶという作業を1年間繰り返すことで、同じようなプログラムの作りをしている傾向のようなものがぼんやりと見え始めた。
次第にプログラムのソースコードの解説をしているネットのページの内容が、理解できるようになっていった。
高校時代の僕は、ゲームで遊ぶことはあっても、それを作ろうという発想はなく、ゲームを作れる人は、選ばれた人だけだと考えていた。
習うより慣れろとは良く言ったもので、繰り返しプログラミングすることで、次第に出来るようになって行った。
恐らく、中学生レベルの学力があれば、十分出来そうな感触を得ていた。
ゲームのプログラムは、書けるようになったのだが、実は、ここからが大変だった。
自分で稼ぐという状況を作るには、アプリにて収入を得る必要があった。
収益モデルとして、広く一般に知られている落ちものパズル系(〇よぷよのような)アプリを作成し、ユーザには無料でゲームを公開した。
ゲーム内に広告を表示させ、その表示回数によって、広告主より広告料を徴収するというモデルを採用した。
銀行口座とクレジットカードは、おやじにアプリ用のものを作っていもらい、その口座にて売り上げを管理することにした。
ゲームを公開するためには、Googleディベロッパーアカウントを作成する必要があり、$25の登録料金が発生した。
発生した費用は、それだけだった。
しかし、ユーザ数は思うように伸びず、売り上げも、お小遣いに毛が生えた程度のものだった。
なんとかならないものかと、焦り始めた時、転機が訪れた。
それは、地元のテレビ局のローカル番組にて、天才小学生プログラマーとして取り上げられたことで、メディアへの露出の回数が増え始めた。
「はい 今日ご紹介するのは、小学生天才プログラマーの岸かなた君です」
「何年生ですか~?」
「小学3年生です」
「いつくらいから、プログラムを始めたのかな?」
「1年くらい前から、始めました」
「1年!! 結構、短いですね~。 誰かに教えてもらったりしたのかな?」
「いいえ、一人でプログラムの本を読んだり、ネットの情報を調べて作れるようになりました」
「凄いですね~ 作ったプログラムは、携帯用のゲームとして公開しているんだよね」
「はい、無料でダウンロードして遊んでもらえるようにしています。ゲーム内に広告を載せることで、収益を上げるような仕組みも入れています。遊んでもらえると嬉しいです」
「収益!! さらに凄いですね~ それも、自分で考えたの?」
「はい、僕の作ったゲームだと、有料コンテンツとして売れるほどのクオリティーは無いと判断したので、広告収入型のモデルを選択しました」
「・・・・・・・・」
「かなた君は、独学でプログラムを勉強して、収益モデルまで考えた携帯用のゲームを作っているようです。 本当にすごい小学生が現れました。 スタジオの○○さ~ん、マイクお返ししま~す」
インタビューされることが多くなり、それに伴って、
全国ネットの番組で放送されるとその効果は絶大で、アプリで遊ぶユーザ数が各段に伸び、売り上げも、おやじの年収に届きそうな状況まで伸びていた。
「おい、かなた 父さん、お前のマネージャになろうかな?」
「会社でも作るか!」
そんな軽口をおやじは言っていたが、内心穏やかでは無かったと思う。
そんな日々を過ごしているうちに、年も明け、全ての宝珠はそれぞれ輝き、ある程度の光の蓄積に成功していた。
僕はこのまま行けば、なんとかなるのではないかと思いはじめたその時、とんでもない試練に遭遇した。
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