第11話 消化活動と研鑽
まず、目標として かすみ との関係改善から開始した、図書館通いは、鍛錬の宝珠を光らせるために、欠かせない作業だった。
彼女は、体が弱いこともあり、部屋の中で出来る読書という行為が大好きなようだった。
彼女のところに読みたい本を聞きに行き、その本を僕が借りたい本と一緒に借り、彼女の家まで届けることにした。
「かすみ、借りたいって言ってた本、借りられてたみたいだったので、返却予定日にまた行ってみるね。 その代わり別の本借りてきたけど、この本で良かったんだっけ?」
「あ、ありがとう かなた いつもありがとね」
本の好みや、読んだ本の感想について話すうちに、次第に赤い宝珠に積もった赤い灰のような砂が少しづつ減っていった。
消化活動は、とても順調に進めることが出来ているハズだったのだが、問題はもう一人の れいか の方にあった。
とりあえず、接触拒否の状況を止め、彼女と普通に話せるようにすることで、すぐに宝珠の赤い砂は、吸い込まれ始めてていた。
しかし、しばらくするとまた、赤い噴煙が上がってしまった。
え?どうして?何を間違った?
この方法で、うまく行くと思っていたのに、これではダメなのか。
苦しい時の天神様だのみということで、またこの状況の確認に向かった。
天神様によると、れいか がどうやら、僕のことが気になり始めたということを、かすみ に相談したらしいとのことだった。
え~、小学1年生との距離感って、難しい。
嫌われずに、でも好かれない、良い塩梅って、どうすればと、途方にくれてしまった。
何かしなければ、状況は変わらないため、試行錯誤を繰り返した。
言うことは簡単なのだが、三人の関係にちょうど良いバランスを保てば、状況は改善するハズと、天神様には言われていた。
どうやら天神様は、生前はそれなりに女性経験も豊富で、お子さんも23人くらいいたらしい。
23って、バスケの神様:マイケル・ジョーダンの背番号じゃないですか~。
天神様が暮していた平安時代は、複数のお妾さんを持つのは、貴族のたしなみとして当たり前のことのようだった。
ちょいちょい自分の体験談を自慢げに話してくるので、正直カチンと来ることがあり、思わず言ってしまった。
「そんな恋愛マイスターの天神様だったら、この状況なんてすぐに解決できますよね」
「無論だ。そんなことは、朝飯前だ」
「そんなこと言うんだったら、お手本を見せてくださいよ~」
「解った。しばらくそちの体を拝借するが、問題ないな!」
という売り言葉に、買い言葉の話の流れで、天神様に体を一時預けることになってしまった。
大丈夫なのか? 心配していないと言えば嘘になるが、今のままではどうしようもないのは、事実なので、お任せする事にした。
僕の意識は残っており、自分を俯瞰するみたいな感じとなり、天神様が僕の体を乗っ取ってしまった。
最初の数日間は、古臭いじゃべり方をする天神様に、現代用語と話し方を特訓することになった。
さすがは、学問の神様、コツをつかむとみるみる上達し、僕が話しているのとほぼ遜色なくなるまでに、多くの時間は必要なかった。
それからの天神様の対応は、鮮やかの一言に尽きた。
とにかくバランス感覚が絶妙で、学校では れいか と普通に会話しながら、なかよしの友達というポジションを確立し、遊ぶときはいつも かすみ の部屋で3人一緒で、共通の話題で盛り上がり、れいか・かすみ・僕の三人がセットであることが普通である状況を作り出していた。完璧だった。
体を僕に返す際に、一言だけイヤミを言われた。
「これのどこが、難しいのか皆目、見当がつかないな」
どうせ僕には無理ですよ~。
学問の神様は、恋愛マイスターでもありました。
今後、師匠と呼ばせていただきます。
師匠へ体を預けたことで、予期せず光った宝珠があった。それは、先進の宝珠だった。
自分の体を乗っ取られることを、了承したことが評価されたらしい。
この宝珠は、死を恐れず真っ先に海に飛び込むファーストペンギンのように、実行することで光る宝珠ということだった。
どうやら、体を預けるという行為は危険なもので、そのまま乗っ取られることも出来ていたとのことだった。
そんなことは、みじんも考えず、師匠を全面的に信頼していたため、僕としては、ただのビギナーズラックだった。
そんな感じで、三人のバランスが落ち着いたところで、季節も変わり、2年生となっていた。
鍛錬の宝珠の光は、順調に半分くらいまで溜まっており、最初の約束の期限までには、間に合いそうな感じだった。
しかし、それ以外の宝珠は、とても間に合いそうな状況ではなかった。
その中でも、まだ一度も光ったことがない宝珠も存在しており、光っていないワースト3の宝珠は、独立・能動・先進の宝珠だった。
これらの宝珠対策として、何か良い方法が無いか師匠に相談したところ、自分で稼げる状況を作り出せば、複数の宝珠を輝かせることが出来ると教えられた。
小学2年生で、稼ぐと言っても就職出来るはずもなく、途方にくれていた。
そんな時に一冊の本と出合った。
それは、携帯ゲームアプリの開発に関するHowTo本だった。
ゲームアプリは、高校時代によく遊んでおり、環境さえ整えば誰でも自力で作って、公開することができることは知っていた。
なんとなく方向性が見えてきたため、ゲーム制作に向かって、着々と準備を始めた。
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