第41話 領域の向こう15

「ユウト君、大丈夫よ」

 

 ケイコ先生がぎゅっとユウトを抱きしめてくれた。

 あの光が見えた時、ユウトはすぐにおねえちゃんのところに向かおうと思った。幼稚園の庭から出て行こうとしたら慌てて駆け付けた先生たちに止められてしまった。


「でも、僕行かないと」


 そう言っただけで、涙がポロポロとこぼれてきた。


 ケイコ先生はぎゅーっと抱いて頭を撫でてくれた。おねえちゃんに上げた手紙を綺麗に折ってくれたのはケイコ先生だった。


 ユウトはなぜかもうおねえちゃんに会えないんじゃないかという気がしていた。だからいますぐかけていきたいのに、先生を振り切って走り出すユウキがなかった。


 「あの手紙」もまだおねえちゃんに渡していないのに。そう思うとユウトは自分が嫌いになりそうだった。ユウトの手紙をおねえちゃんはとても喜んでくれた。


 だから、高橋君が書いた手紙ならきっともっと喜ぶんだろうなとユウトはわかっていた。


 だから。


 ユウトはケイコ先生の胸に顔をうずめた。


 だから、どうしても渡せなかった。

 高橋君の手紙はユウトの秘密の場所に隠したままだった。

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