第41話 領域の向こう15
「ユウト君、大丈夫よ」
ケイコ先生がぎゅっとユウトを抱きしめてくれた。
あの光が見えた時、ユウトはすぐにおねえちゃんのところに向かおうと思った。幼稚園の庭から出て行こうとしたら慌てて駆け付けた先生たちに止められてしまった。
「でも、僕行かないと」
そう言っただけで、涙がポロポロとこぼれてきた。
ケイコ先生はぎゅーっと抱いて頭を撫でてくれた。おねえちゃんに上げた手紙を綺麗に折ってくれたのはケイコ先生だった。
ユウトはなぜかもうおねえちゃんに会えないんじゃないかという気がしていた。だからいますぐかけていきたいのに、先生を振り切って走り出すユウキがなかった。
「あの手紙」もまだおねえちゃんに渡していないのに。そう思うとユウトは自分が嫌いになりそうだった。ユウトの手紙をおねえちゃんはとても喜んでくれた。
だから、高橋君が書いた手紙ならきっともっと喜ぶんだろうなとユウトはわかっていた。
だから。
ユウトはケイコ先生の胸に顔をうずめた。
だから、どうしても渡せなかった。
高橋君の手紙はユウトの秘密の場所に隠したままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます