第150話 取り忘れ注意!

「言いますね、カボチャとバナナ、カレー粉と冷凍のシーフード

あっ、それとうずら串一本、椎茸は半額です。あと……」


「では、ポイントカードと身分証明書と、出来れば買った商品をメモ

にしてご来店下さい。明日の十時から十一時ですね、お待ちしてます」


電話を切った。やっぱりやらかした。昼間、釣り銭取り忘れた。

キャッシュトレーの上のコインを財布に入れた記憶はあった。

が、レシートが無い。お札が足りない。即スーパーに電話した。


その事が判明したのは、家計簿をつけようとした夜だった。

財布をひっくり返す。中身を全部出す。ゴミ箱をあさる。

払ったのは五千円札一枚。記憶では会計三千円弱。

千円札二枚がない。一円でも合わないと気になる、私。


昼間、スーパーで使ったお金は二千九百五十五円のはずだ。


「電話では、手元にレシートとお札があって、

私のお釣りだって確認取れたみたいな事言ってたんだよ。

けど本人確認のために、買った商品リストが必要なんだって」


首痛安静夫だんなにも聞こえる声でメモを書くデバネズミ。


「油揚げと豆腐、あなたのお菓子三袋。あとはレーズンパンと、そう

そう黒酢酢豚のもと、トンカツ弁当も買った」


金額も書き出してみる。おお、二千九百円くらいになった。


「お釣り取り忘れちゃう事はまぁ仕方ないな。けどよく思い出せたな」


呆れ顔と驚き顔を同時に見せる夫。


言わないけどね、私。照れちゃって言えないけどね。


首痛安静夫あなたの事を考えて買った物だからだよ。


椎茸とカボチャは煮物にするね。

カレーは肉よりシーフードでしょ。

食パンよりレーズンパンの方が食べやすいかしら。

バナナも口に運びやすいね。

酢豚、トンカツ好きだよね。


少しでも痛みを忘れて欲しくて……。

好物ばかりカゴに入れたんだよ!

言えないけどね。


無事にお釣りを手にしたデバネズミ。


取り忘れた失敗を、夫への愛を増した思い出に脳内変換。


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