第146話 巣作り 1

「今年もーがやって来たな。何話してるんだろう」

 早朝、窓を開けて、夫が嬉しそうに言う。

「ほんとだ。鳴き声が聞こえるね」

 何を話してるのかは……知らんがな! 忙しい朝。

 洗濯したいデバネズミ。スルーする。


「朝からずっと喋ってるぞ。ツバメ同士でしか分からないよな」


 そんなに気になりますか? うーん、答えてしんぜよう。

「きっとね、ここに戻って来られた苦労話じゃないの。

 去年、飛び立ったんでしょう。一年間の報告会だよ」

 ふんっと鼻で笑われるデバネズミ。

「……いいか、聞いててよ。必ず最後にって鳴く」

「ほんとだ。あっ、分かった。今日の目標じゃないの。餌何匹ゲット

 するとか。ね、あなたの今日の目標は何?」


「そんなものあるか!」背を向けて仕事に行く夫。


ムキッ。家事を済ませてから調べるデバネズミ。


ツバメ。鳴き声。ジージー。


あった! は、

「ここで一緒にヒナを育てようよ」と誘っているオスの声。

メスに巣場所を見せて鳴いているらしい。


そして、って鳴くのは、交尾のお誘い。

巣作りして、交尾して、が聞こえると

ヒナ誕生。エサ欲しいアピールだそうだ。

はカラスや猫が来てるよの警告鳴き。


ふふ、ツバメ達も人間も同じじゃん。


結婚してから二十六年間を振り返る。ジャージャー泣き、チャカ泣き。

子どものエサ欲しいアピールもクリアして、天敵からも守ってくれたね。


『オスがジャージャーと子どものように鳴くのは……』


 何ナニ? 続きを読むデバネズミ。


『鳴き声を真似るのは、メスの母性本能をくすぐって興味を

引いている……」

 

おお、そこも全く同じじゃん。

確かに私も、夫に母性本能くすぐられたよ。


ツバメに親近感がわくデバネズミ。

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