第145話 生きてるうちは……。
「やだー! 怖いよね、あんな物が脱走したら怖いよね」
ヘビ嫌いのデバネズミ。ニュースを見て一人で騒ぐ。
体調三メートルのニシキヘビが脱走逃亡中だそう。
毒はないけど、巻き付いたら窒息するでしょ。
近隣住民の皆様は眠れぬ夜を過ごし、外出不安でしょ。
飼い主も必死で探す。住民に頭を下げながら探す。
「あなたも探しなさい! あなたの責任だから」
お怒りモードの住民。お気持ち痛いほどわかります。
そんなニュースを見て、ふと二、三日前のSNS投稿を思い出す。
「お母さんありがとう!」を一番見た母の日に深く考えた。
『親を捨ててもいいですか』衝撃的なタグ。
子供時代、親から虐待や束縛を受けて育った人たち。
親子関係に苦しみ、未だに苦しんでいる人もいる。
そういう中で「母の日」&「父の日」ってきついだろうな。
「昔の事は忘れて、許せたらいいね」
「子どもが親を看るのは義務だから」
「親に感謝することは人として当然」
何気ない意見に、罪悪感を感じて、形だけのプレゼントを
する人も世の中にはいるでしょう。
ニシキヘビを故意に脱走させたわけじゃない飼い主。
迷惑をかけていることに平謝りで探す。
他人に害を与えない可愛らしい仔犬だったら……。
同情して一緒に捜索したのかな。お怒りモードにならずに。
飼い主が年配の女性に頭を下げて、事情説明をする。
『いろんな事がありますよ、生きているうちは
……相手だって生きてるんだから」
飼い主を責めず、ヘビの生死を気にかける発言。
なんか答えを貰った気がする。
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