第143話 素直になろう

「二十八日に来るって。お前の所メール来た?」

娘とラインをしていた夫がニヤニヤしている。

自分に連絡が来た事が嬉しいんだろうな。


「えっ? 私、仕事なんだけど。ちゃんとシフト確認してよ」

私が休みだと勘違いした夫。少し落ち込みながらまたライン。



娘は嫁いだあとも、独身時代と同じ職場で働いている。


「あの車、そうじゃないか? 今日出勤なんだな」

娘の車を見つける夫。ショッピングモールのレストランに勤務。

買い物だけに来た私たち。顔見たいのかな。会いたいのかな?


「ちょっと寄ってく? 顔だけでも見てく?」

「……別にいい。帰るぞ!」

会いたいくせに、強がる夫。素直じゃない。何でかしら?


「結局、二十八日は来るの? 来ないの?」

「……来ないって。五月に入ってからにするって」


少し早口で答える夫。残念なんだろうな。


「私の休み、ちゃんと伝えてくれたの?」

「……うん。三日と、五日と……。メールするって」


なんか不機嫌な感じで答える夫。何で?


きっと、お母さんがいないなら行かないって言われたのかしら?


父親って素直になれないのかしら?


いや、夫の性格だ。会いたいって自分から言えない。

自分からラインが出来ない。健気に待っている。


ママって言うより先にパパって言った娘。

あの時の夫の悦びの舞を思い出すデバネズミ。


◯◯ちゃん、来られる日が分かったら、必ず

お母さんにメールする前に、お父さんに先にラインしてね。

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