第134話 笠地蔵 & サプライズ

ポトリ ドサッ、ガツン。ポト。バンバン。

夫も娘も仕事に行き、一人こたつで丸くなるデバネズミ。

お煎餅食べながらテレビ見ていても聞こえる音にびくつく。


何? 重い尻を上げ、音がした玄関に向かう。

あら、今日もだわ。よっこいしょと封筒を拾い

ドアノブにかけてある紙袋を取り

玄関前に置かれたダンボールを持ち上げる。


今年に入ってから毎日のように届く娘宛てのお祝いだ。


コロナ禍のリモート婚は何が正解で常識か分からない。

参加、出席される方が先にお祝いを下さる。


先に娘にLINEやメールをして、皆さまポストインする。

ご祝儀袋ありがたや。お祝い品感謝致します。

頭を下げて両手を合わせ、娘の部屋に運ぶデバネズミ。

雪の中、笠かぶせたわけでもないのに、お宝もらった

おばあさんの気持ちになる。なんか申し訳ない。

お祝い金の口座振り込みもビックリした。


娘共通のお友達からお別れ会をしてくれると

電話があった。娘に内緒で……娘の留守に届いたブーケ。

サプライズで当日私が渡して欲しいとの事。


お別れ会はzoomで十三人ほど。みんなで楽しくおしゃべり。

宴もたけなわ。娘とみんなの思い出動画が流れて号泣する。


可愛がってもらったね。みんなとたくさん遊んだね。

お別れは寂しいね。思わずもらい泣きのデバネズミ。

娘は感謝の挨拶をし、画面に映る友達に頭を下げる。


さあ、サプライズの記念撮影。

先に渡されて隠していた手作りブーケを娘に渡す。


美しいバラのブーケを胸に笑顔でパチリ。

化粧が落ちても気にせずパチリ。


本当にみんなありがとうございました。さようなら。

任務完了。ほっと胸を撫で下ろす。


「……良かったね。リモート婚でこのブーケ使えるね。

それにしても、あなたそんなに驚いてなかったね。

お母さん、今日まで見つからないないように大変だったよ」


娘がふふと笑う。まさか、知っていたの? まさか!


やっちまった! 電話が来た時に書いたメモが残っていた。


リビングのホワイトボードに、の文字。


みんなごめんなさい。ごめんなさい。


今年も使えないデバネズミです。





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