第132話 新店御案内 苦戦中
「銀行を少し北に行った所よね?」
「ラーメン屋さんの前でしょ、分かるわ」
「元薬屋さんの跡地ですね」
「スーパーを南に行った所ね!」
「この道をまっすぐ行って突き当たりを左折してすぐね!」
今、勤務しているお店がもうすぐ閉店する。
昨日は三十人に閉店の案内と新店の場所を説明した。
レジ前にある地図を見ながらお客様が確認し、質問する。
「はいそうです」「その通りです」
是非、ご来店下さいませ、お待ちしています!
質問に答え、新店に誘うデバネズミ。
「けど、買い物ついでに寄りたいから行かないかも」
「あの通りは出にくいから……」
「わしゃあ、歩きだで遠い。宅配してくれる店に変える」
お客様の反応も様々だ。はっきりと言う方も多い。
スーパーの中にあるから利用していたお客様が多い。
うーん、私もそう思う。クリーニング屋に拘らなければ、店より場所で選ぶ。
忙しい主婦、単身赴任のサラリーマンは特についでが大事。
買い物ついでのメリットは強敵である。
デバネズミの上からの指示は顧客様を新店に連れてくる事だった。
やらねばならない。いつもより、倍増しの声と営業スマイル全開デバネズミ。
マスクしていて良かった。必死な顔がバレません。皆さん夜泣き回避。
「あのですね、コインランドリー併設しています!」
「大丈夫です、今度は駐車場が広くなります!」
とにかく新店へお越しください!行って下さい!お願いします。
売り上げ減ったら大変なんです。
コロナ再流行。在宅ワークでワイシャツ、スーツが減る予感。
そして食費優先、クリーニングにお金をかけない。
おうちでクリーニング出来る服……などなど強敵。
来店されていないお客様には電話で閉店のご案内をする。
自分の家からどう行くか説明を求められる。
あなたのおうちはどこですか?方向音痴のデバネズミ。
北とか南が苦手です。右か左かで言っていいですか?
「……じゃ、違うスーパーさんにも同じクリーニング店あったね、そこにする」
ガビーン!そうくるか。今まで説明した意味。白目剥くデバネズミ。
「あっ、今度の新店、ピチピチの若いお姉ちゃんいるんです!社長さん、ぜひ」
「……若けりゃいいってもんじゃないよ!」
あ!飲み屋の勧誘じゃん。ここクリーニング店だった。ハハハハハ。
やっぱりダメダメデバネズミ。反省。戦略練り直し。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます