第131話 photo and remote婚

「明日、予約してくるね。次の日曜日は衣装探して、次は……」

 来年一月に結婚を控えている娘は忙しい。休みはほとんど家にいない。


「お母さん、手紙の最初は拝啓だよね、ダメ出しされたよ」

 招待状の文面は娘が担当するらしい。彼からダメだし?なぜ?


 謹啓の方が丁寧なのかな。まさかを名前と間違えてないよね?

 いや、結婚式の招待状だ。書かないでしょ!


「ブーケはそこの三百円均一の花にするね」えっ?ホコリかぶってますけど。

「着付けとカメラマン、リングガールも◯◯ちゃん家族に頼んだから」

 

ママが着付け、パパはカメラマン、娘ちゃんがリングガールね。

えっ?美容院は?カメラマンはプロじゃないの?

まず式場はどこ?何人くらい招待するの?料理は?引き出物は?


「彼の家だよ。二百人くらいに招待状出す予定だよ」豪邸ですか?違うよね?


コロナ禍だ。冬だ。式場予約してキャンセルになったらショックが大きい。

最初からリモート結婚式をするとの事。遠方の親戚も自宅で出席。メリット。

WEB招待状で一斉送信。スピーチの依頼もラインでしてる。


ついていけない。時代についていけないデバネズミ。


「……ちょっと待った!お母さんはどうするの?当日どこで何をしてるの?」

「お父さんと家でzoomで見ていてね!家に来られても困るからね」


何ですと!ウェディングドレスの娘を間近で見られないの?

夫はバージンロード歩けないの?一番盛り上がる親への手紙は?


「先にウェディングドレス姿の写真撮るの。それ流す予定だから。

 それ見てね。親への手紙なんてやらないからね、よろしく」


ガビーん!(昭和の落ち込み) えっ、じゃあどこで泣くの?

「明日嫁ぐわたしに〜♫突然涙こぼし元気でと何度も何度も繰り返す母♫」


秋桜が流れて 涙こぼす母 演じることが 幻になる  デバネズミ


まあ、恥ずかしがりやの夫にはちょうどいい。

夫婦二人きりで思う存分泣けるから。

お父さん、誰にも遠慮しないで泣こうね。











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