第115話 ハコオシ

「旦那に買ってもらったんです」

「……もしかして欲しがっていたアレ?」

「そうなんです!もちろん本物じゃないけど」


職場のパートさんが笑顔で教えてくれた。

スマホ写真でを見せてくれる。


キラキラ光ってるー。なんて美しいのだろう。

「私も欲しい!絶対欲しい!重さどのくらい?」


「二キロはないかな。長さは同じですけど」


宝石も靴もバックも欲しいと思った事がない私。

初めて欲しいと思ったアレ。


「……で、誰が好きなんですか?」

「……う~ん、そう聞かれると迷うわね」


幸年期は優柔不断になる。迷うお年頃。


ルパンより五右衛門 翼より小次郎

ケンシロウよりレイ ルフィよりエース

好みがハッキリしていた若かりし頃。


「……う~ん、全員好き。あの時の三日月、

この時の山姥切、う~ん、もうみんな好き」


「……ハコオシですね」

ハコオシ?……ハコオシって何?

箱推しと言われるデバネズミ。


そっか、年を重ねると、いや配偶者いると

個人を好きになる必要なくなるからか。納得。

イケメン全部好きになるからか。納得。


グループみんなが好きになるお年頃。

ハコオシになるお年頃。平和な毎日。


ダイヤの指輪より模擬刀欲しいデバネズミ。

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