第101話 YouTuber 広告

「これつい聞いちゃうよね」

「スキップしないで、最後まで聞いたよ」

 夫と娘が何やら楽しそうに話している。


「何?なに?ナニ?――えー、嘘でしょ!」

 オーバーリアクションのデバネズミの視線

 の先は、YouTubeの広告の歌詞。


「だって、これ実名なの?本当にこの学校

 あるの?この子本当にいるの?ヤバいよ」


 夫と娘の冷たい視線を無視して、最後まで聴く。

 東京オリンピックまでいじめられても我慢し、

 助けを待ちなさい!というメッセージだ。


「お母さん、うるさいよ。学校名も個人名も

 実在しないよ。それより、こっちも聞いて」

 娘が自分のスマホで検索し、曲を探す。


『あー、良かった。実在しないのか。

 けど、同姓同名の子がこの曲のせいで、いじめ

 にあうかもしれない!そしたらこの歌手が

 違った意味で、いじめの加害者じゃないの(怒)

 そしたら、正義じゃないじゃん!』


 いじめ……10羽のアヒルのうち、一羽だけに

 首輪を着けると、残りの9羽がくちばしで

 その首輪をしているアヒルをつつくという。

 首輪を病原菌だと思い込んで……殺す。

 自分達の命を守る為の本能だという。


 人間だから、本能を理性と知識で自制し、

 いじめを無くす事が出来るのに、

 ストレスを自分より弱い者にぶつける。

 それもまた本能だ。

 9月1日、誰も亡くなりませんようにと

 心から祈るデバネズミ。


「この曲の方が耳に残るでしょ!」

 娘が流したその歌詞にブルブルデバネズミ。


 平和ボケの日本への警告。核の攻撃など

 想像させないで、穏やかな幸年期を

 過ごしたいんですけど。ブツブツ。

 もうYouTube見なきゃいいのか、ブツブツ。

 曲がアニソンみたくて、耳に残る。

 

 YouTuber広告の攻撃サバイバー。

 がんばれー!デバネズミ。

 

 


 

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