第95話 信じてる!

「じゃ、12時10分に迎えに来てね!

 駐車場にだよ!必ずね、12時10分だからね」

 通院日は必ず迎えに来てくれる夫。

 朝、一人で電車に乗って行くデバネズミ。


 携帯電話を持っていないデバネズミは

 時間指定で夫に約束を……押し付ける。

 少し偉そうに言うのに、優しく頷く夫。


 なぜか、空いていて一時間早く終わりそうだ。

 時間指定しちゃったからな。

 時間変更の電話したら怒るかな?

 

 迷った挙げ句、病院の電話を借りて

 時間変更をお願いするデバネズミ。

 

 電話に出ない!留守電にもならない。

 

 私の勝手だから、12時10分まで待とう。


 携帯電話がないから、メールも出来ない!

 夫は病院にかけ直して来るタイプではない。


 薬を貰ってからもう一度トライする。

 電話に出ない!留守電にもならない!

 

 約束の時間まで一時間何をしてようかな。

 でも待てよ、運転中で出られないだけ、

 きっと私からだと思っているに違いない。


 夫は必ず来てくれる。信じてる。

 必ず早く来てくれる!信じてる。

 

 スリッパ脱いで、靴を履き、確信して

 駐車場に向かうデバネズミ。


 雨がひどくなった。寒い。また病院に

 戻ろうかな?いや、夫は必ず来てくれる。


 15分ほど待つと、見慣れた車が来た。

 時間指定まで40分もある。

 夫が来たー‼やっぱり来てくれたー。涙


「運転中に電話がなって、きっとお前からだと

 思ったよ。寄りたい店あったけど寄らないで

 来た」


「あんなに12時10分って言ったのに、ごめん。

 でも必ず来てくれると信じてたよ。絶対に

 来てくれると信じてた。ありがとう!」


 携帯電話がないのは不便な時もあるけど、

 信頼関係を強める事も出来るんだと実感。

 惚れ直したデバネズミ。嬉。恥。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る