第30話 人財

広告のチラシの裏に夫に手紙を書く。

【冷蔵庫の二段目におかずあり。

チンしてください。豚汁温めてね】

一年に一度の研修会に行くからだ。

三時間パートも繁忙期前は強制される。

「繁忙期、心を亡くした接客はしないように、

笑顔で乗りきりましょう」

会社のトップの話が終わり、ゲストの話。


「会社に必要な人材になりましょう。

人材には五種類あります。漢字で書くと……」


ホワイトボードに書き出す。

人材、人財、人在、人災、そして人罪。

材は会社にいて欲しい人。財は本当に必要な人

在はいてもいなくてもいい人。

災は悪口ばかり言うような、災いの人。

罪はそのまま、辞めて欲しい人。


宝のような人財が多い会社は必ず成功し、

どんな不況でも生き残るとのこと。

そりゃあそうだ。うなづくデバネズミ。


「これを家庭、家族にも当てはめましょう。

自分はどのジンザイか考えましょう」

と話を締める。拍手。


研修会後、そのまま仕事で帰宅は夜。

洗いあげも、洗濯物取り込みも夫が

しっかりやってくれている。感謝。


私は夫にとってどんな人材かな?

いてもいなくてもいい妻、不満ばかりの妻、

先に死んで欲しい妻、いや、本当に必要な

妻になりますと、夫の寝顔に約束した。



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