第20話 パンツ何色

「奥さん、今日のパンツ何色?」

「えーとねぇ、今日はピンクかな」

新婚ホヤホヤの頃の電話のやり取り。

夫はこんなことはしない。

イタズラ好きな父親からだと普通に答える。

「もしもし」のかわりだ。

白いレース付の情報をプラスしようと

受話器を持ちかえた。


遠くで変な声がする。喘いでいる。

流石に父親ではない。

「誰ですか?間違えました」


父親と間違えましたとも言えず、

「今日のパンツはお腹まで隠れるベージュでした」

ガチャン。


パンツの色を間違えたことにする。


「明日、履いてくパンツ何色?」

「赤にする」

あれから二十年、毎日夫に確認。

気合いをいれる日は赤だそうだ。

もちろん仕事で本領発揮。

 

あれから二十年、幸年期。

ネズミのマスクのような小さいパンツは

風邪をひく。


デバネズミのタンスにはあの日答えた

お腹まで隠れるベージュのパンツしかない。

残念。

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