第19話 こむらがえり

「今夜もなりそうな気がする」

夫に宣言して眠りにつくと、90%の確率でなる。

 

深い眠りの後にくる覚醒。トイレ行こうかな?

油断してちよっと伸ばす。

足を伸ばした瞬間。ビーンとなる。

ヤバイ、ヤバイ、やっちまった‼

ふくらはぎが固まる。

「痛い。痛い」グーでさすっても、ぱーで

さすっても硬いままのふくらはぎ。


寒かろうが、眠かろうが必死で擦る。

1分間さすり続けてようやく緩和。

「はーぁ痛かった」

乾燥した部屋で生きるか死ぬかの闘い。

デバネズミの歯茎は乾き、布団は散乱。


マグネシウムが不足してるとなりやすい。

そんなん違う。

運動不足のなにものでもない。

夜中のこむらがえりの恐怖は、まるで

毎晩幽霊の訪問を受けているかのように

デバネズミをやつれさせる。


運動しなくちゃ。

昼間椅子に腰掛け足を伸ばし、

指だけを曲げる運動。

「イチニッ、イチニッ」


なぜ昼間はこむらがえりにならないと

思ったのか?そんなわけない。

学習能力ゼロのデバネズミ。

「キター。なった。痛い。誰かさすって」


夫が何事かととんでくる。

「もっと優しく、もっと強く」

「どっちだ?」夫、半切れでさする。


「ありがとう治ったみたい」


いっが終わる前に夫が叫ぶ。


「指がっ。ゆびがっ。つった。痛い」

「手の指もつるんだ。はっはっはっ」


早くさすってくれ。


夫婦でさすりあう。幸年期。面白いね。




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