第18話 げっ歯類

「ハムスターでも飼おうか?元気になるよ」

「もう生き物はいい。死ぬと辛い」

夫に拒否される。

娘が五才の時に路地の良心市で白兎を見つけた。

うさぎ五十円、キャベツ百円の餌つき。

生き物の命が野菜より安い。

小学生のうちに生き物の死を経験させようと

情操教育のつもりで迎えた。


夫の行き届いた世話の素晴らしさ。

夫の手は舐める。私は噛まれる。

夫には撫でて貰おうと頭を差し出す。

私はスタンピングで呼ばれる。

後ろ足でバンバン。ハイなんですか?

トイレが汚いとでも⁉ 掃除する。

こきつかわれるデバネズミ。同じげっ歯類。

あなたより長生きしてますけど。


白兎は手厚い世話により十一年生きた。

娘、高校生になってるワイ。


夫と火葬場に行く。市の焼却施設に運ぶ。

軽かったので、八百円で焼却。

買った値段の何倍ですか?


まあ憎たらしかったけど、死ぬと淋しい。

「奥様もこちらへどうぞ」

係りの人に招かれて行くと、すでに夫が

線香あげてる。拝んでる。涙もポロリ。


マジですか?テンション低すぎ。

犬や猫だったらこの人後追いするかも。


そうだ。思い出した。夫は動物の死に弱い。

もう生き物はやめましょう。


デバネズミもとにかく手厚い世話を受けている。

夫より長生きすることが愛情だね。

ごめんね、もう言わないよ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る